短編集

□また会いにいくから-蛍火の杜へ-
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気づくと俺は深い闇の中にいた。






眠っているような、夢を見ているような感覚だった。












―ギン。ギン。








どこからか懐かしい声が聞こえる。






すごく寂しそうな声。






すごく辛そうな声。








ほたる、ごめんな。






ごめん。






















―ギン。







相変わらず寂しそうな声。





だけど最近はそこに前向きな意思を感じる。







よかった、もう辛そうじゃないな。









よかった。








……よかった、はずなのに








すこし寂しい。










このままほたるは俺のことを忘れてしまうのかな、









そう思ったときずっと何も見えていなかった視界に光がさした。











「名をギンといったな。お前に人として生きる覚悟はあるか。」








とつぜん視界を満たした光の中に








何か、大きなものの影を見た。








「ほたるの側に行けるならどんなことでも引き受けます。」







この人は一体何者なのだろうか。







俺はもう一度彼女の前に現れることができるのだろうか。








なにもわからぬまま、応えた。









「よかろう。主にもう一度、人としての命をやろう。








なぁに、ただほんの神の気まぐれじゃ。








よくあることじゃ。









せいぜい大事にするがよい。」








その声が聞こえたのを最後、






意識が遠くなるのを感じた。
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