■Optimus■

□【理由】
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次々と運ばれてくる棺に敬礼をする軍人

美波は他の軍人と同じく敬礼をしたまま目の前を通る棺を目で追う



「私が死ぬべきだ……。」

誰にも聞こえない声でつぶやいた







「なぁ美波。」


いつものように葬式が終わり一通りの仕事を終えたのは夜の10時


皆は仕事を一足先に終えてラチェットの呼び出しにより
オートボット達は格納庫とは別の場所に居る


そして格納庫に一体だけ残っているオプティマスに話を済ませると、ふと名前を呼ばれた


「何?」

オートボットのメンテナンス謙お世話係りになったのはつい最近

その前までは戦場で銃を構えていたが移動になった



「美波が軍に入った理由を聞いてもいいか?」


オプティマスはあの時のつぶやきを聞いていた


他の者の軍の入隊理由は国を守るため、親兄弟の影響や家庭の事情、経済理由といった感じだ



だがあの言葉がどれにも当てはまらない気がした


むしろ「死にたい」とも捉えられるような言葉にオプティマスは初めて軍の者に入隊理由を聞いた





「こんな事言ったら、他の軍人が怒るだろうけど。」


自分にあきれるように笑う






「かっこつけて死にたいだけ。」





こんな命ね



どうでも良い



ただ、自殺なんて周りや親からどう思われるか


ほんとは悩んでたんだ、とか



自殺なんてバカみたい、とか


余計な事思われたくない



死んだらそんなのどうでも良いのに変なとこだけ気にするの



軍に入隊して戦場に行けば死ねるかもしれない

戦場で死ねば皆「立派な最期だ」って勘違いして終われる





ほんとは死にたいだけ



国を守るふりして



自分の都合良いように銃を構えてる



棺を見ては思う



どうして私じゃないのかと



命なんていらないと言ってる私がどうして死んでないんだと







「自分の命なんてどうでもいいの。

だから、メンテ係に移動させられたのは正直納得いかなかった。」

ロボットが敵だからこそ一瞬で死ねるかもしれないのに



チャンスだと思ったのに



「なぜ自分の命をそこまでして自ら絶とうとする。」





常に正義と仲間、平和のために戦ってきたオプティマスにとっては疑問だった


オートボットとはいえ自殺行為をする事は少なくないが

「死にたい」ではなく「守る」ためだった



「いろんな人間が居るの。」


そう言って背を向ける


軍服を着ている後姿はいつもより弱く、小さく見えた





「美波…こういった環境に居る限り命を失うのは仕方ない事だ。

だがそれでも私は……君に生きていて欲しいと思う。」



私の勝手な感情で放った言葉に


美波は振り向き悲しげな表情で私に笑った





死にたい理由が何なのか



私にはわからない



君は答えてもくれない





その理由がわかったとしても命を失う現場には変わりない





ただ、「死にたい」と銃を構えるのではなく



もっと違った希望を持ってくれたら



君はもう少し違う笑顔を私に向けてくれるだろうか







死ぬためではなく



私達と生き延びるために命を懸けてほしい





私達と一緒に





私と未来を望んではくれないだろうか





「他の人には内緒ね。こんな理由失礼だから。」



オプティマスの言葉には返事をせず美波はそう言って再び歩き出した









END

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