■Ironhide■

□【桜のCANDLE】
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それはNESTに向かう途中だった



アメリカの真っ暗な路地を一人フラフラ歩いてる女の子

アイアンハイドはセンサーで探知した



普通夜道を男でも一人で歩くのは危険なのにこの女は何をやってるんだと

スピードを少しゆるめた

そして案の定数人の男に囲まれどこかに連れてかれる

アイアンハイドはライトを消し静かに後を追う





更に奥のほうへと男達は歩いていく

そして立ち止まると男達は女の服を脱がし始めた





アイアンハイドはライトをパッとつけた



「誰だお前!」

男達はその光にすぐ振り向いた



ブオオオン!といつもより大きくエンジン音をならし男達のギリギリまで急発進させる

「うわっ!この野郎!」

それでもまだ逃げようとしなかったのでアイアンハイドはもっと後ろに下がりまた急発進させる

「おい…あいつマジかよ!」

「この距離であのスピード…やばい!逃げろ!」

男達は路地のフェンスを登り逃げていく

普通なら猛スピードですぐに止まる事など出来ないが

目の前のトップキックは急ブレーキ音を響かせ女の子の数メートル手前で止まった



「おい、大丈夫か」

窓を開けダミーの人間を運転席に写すアイアンハイド





「…あなたオートボットでしょ?」

女の子はじっと見てそう呟いた

「…なぜわかる」

「どんなに腕の良いドライバーや高性能な車でもあのスピードとこの距離で止まる事は出来ない。

なら、オートボットかなって。」



「ふん。車に詳しいな。」

「…」

女の子は下着のまま洋服を持ちアイアンハイドの運転席へ乗り込んだ

「おいっ服を着ろよ!それに何勝手に乗ってんだ!」

大きいトップキックが動揺し揺れ動く

「あまり揺れないでよ。SEXしてると思われちゃうでしょ?」

クスクスと笑いながらやっとシャツを着だす

「お前…」

なんかとんでもない娘を乗せてしまったと少し後悔したアイアンハイド



「どうせこんな夜道じゃまた他の奴等に襲われるだろうし。家まで送って。」



アイアンハイドはしょうがなく言われた番地に向かう



「お前アメリカ人じゃないな。アジアだろ。」

女の子は黒髪に黒い瞳、背も低く年齢も幼そうだった

「日本人よ。ちなみに二十歳超えてるから」

日本人は幼く見られがちな事を知っている

「この国の成人の女はもっと大人びてるがな。」

自分の知ってる成人女性と随分外見が違うが

その可愛らしくも美人とも言える顔立ちにまじまじとスキャンして見るアイアンハイド



「名前なんて言うの?」

「アイアンハイドだ。お前は」

「…香織。」

香織と名乗った女はどこか遠くの景色を見ていた

「お前は俺が怖くないのか。」

「怖くないよ。」

その言葉になぜか寂しそうに笑って答える

その表情の意味がアイアンハイドはわからなかった

「でも最後にオートボットと会えるなんてラッキー!すごい嬉しい♪」

あんな表情をしたかと思えば今度は笑顔でハンドルにベタッと張り付く

予想外の行動にフラッと一瞬道をはずすがすぐに立て直した

「…最後って何だ?旅行にでもここに来てんのか?」

「まぁそんなとこ」



しばらくして言われた番地に到着した



「ありがと。楽しかった^^」

そう言ってドアをしめバイバイと手を振りまた暗い路地へと歩いていった





ここは住宅街

降りてもおかしくない場所だがアイアンハイドは違和感を感じていた

気付かれぬようゆっくり着いていくと柄の悪そうなアメリカ人達に香織は自ら話しかけていった



『あんな奴等が友達か…?』



センサーで見ていると何かを交換したようだ

香織はさっきみたいにバイバイ、とその人達に手を振るとまた暗い路地へと歩いていった





おかしい



あの先に家などない



アイアンハイドはゆっくり後を着いてく



そして真っ暗闇の中香織は携帯の明かりだけを頼りに何かをゴソゴソ用意し始めた

そしてカチャッと音をたてるとソレを頭に突きつけた











銃だ______





アイアンハイドはセンサーで確認したと同時にものすごい勢いでトランスフォームした



「!!」

香織はその音に驚き銃をその方向へ向ける

「誰」

「俺だよ」

アイアンハイドのライトで辺りは多少明るくなりお互いが見えるようになった

「何で居るの?」

「何で銃を自分に突きつけたんだ」

「…」

「自殺か」



さっきのアメリカ人達から銃を買ってそれで自殺しようとしていたのだ

「その銃を捨てろ」

「嫌」

香織は銃を後ろに隠す

「渡さないのか。ならこれで死にたいか?」

脅し程度に出したキャノン砲

だが香織はそれを見るなり「そっちの方が一瞬で死ねそう!撃って!」と言い出した

「…人間を殺ると俺がオプティマスにスクラップにされちまう。銃をよこせ」

少し乱暴だが女の体を傷つけないようそっと指で腕を掴む

「はなして…っ」

だが大きな鉄に適うわけがない

あっけなく銃を取られ指でぺしゃんこにされた

「ちょっと!これ買い取った物なんだからね!」

「あぁわかったわかった。それよりお前家はどこだ?」

潰した銃をピンと指ではじく

「…ホテルに泊まってたけど今日チェックアウトした。もうお金ないし。」

「お前これからどうするんだよ」

「自殺して全部解決するつもりだったけど。」



アイアンハイドをキッとにらむ



「でも、政府に言えば銃くらい弁償してもらえるでしょ?オートボットが壊したなら尚更ね。」



アイアンハイドはプシューと排気をもらす

「とりあえず乗れ」

ビークルモードになりドアを開ける

「どこに行くの?」

「俺の家だ」



香織は乗り込み行き先をアイアンハイドに任せた



前まではNESTの格納庫に戻っていたが

最近はオートボット達に個別の家が与えられるようになった

家と言ってもアイアンハイドの場合は武器だらけの大きな倉庫みたいな所だ



「人間が住めるようには一応なってる。」

レノックスが用意したのだ

俺が来る時、快適に過ごせるようにな、と言ってキッチンやソファ、シャワーなど一通り揃えた



「…一般人なんて入れて良いの?」

「しょうがねぇだろ。行き場をなくしたのは俺なんだし…

特にNESTの奴等から部外者を居れるなとは言われてない。」



自由に使って良いと言われたので言われたとおり自由にしているだけだ



「なんで自殺をしようとしたんだ。」

オートボット用の大きなイスに座るアイアンハイド

「…いろいろあるの。死ぬのは怖いから、銃で一瞬で死のうと思って。だから旅行者としてアメリカに来た。」



人間の悩みなどわからないが

アイアンハイドは香織が死ぬのはなんとなく嫌な気分がした



「人間は大変なんだな。しばらくここに居れば良い。

その間に気が向いたら銃の弁償してやるよ。」

「なにそれ。てゆうかここに銃いっぱいあるじゃん」

香織はズラリと並べられた大きな武器を指差す

「お前がディセプティコンなら殺ってたがな。一般人は傷つけるなと言われてる。残念だな。」

「…ディセプティコン支持派になろうかな」

「そっち側になった所で良いことなんてひとつもねぇよ」



アイアンハイドは武器の手入れをし始める
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