■その他キャラ■

□【繋げない 愛】
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両軍が和解し、なんとなく人間達ともなじみ始めた頃



そいつは居た



誰かに話しかけられればニコニコと笑顔で返す

オートボットにはもちろん、ディセプティコンにも変わらない笑顔で接する



俺等に笑顔で話しかけんのはレノックスやエップスくらい

あとはその他数人の軍人



穏やかな性格で軍に関わってる事が不思議なくらいだ



いつも、笑ってる





そんなこいつと付き合い始めて数週間

意外と胸はある、なんて思ったお楽しみの夜が終わってお互いベットで横になってる時



「背中のタトゥー、」

「ん?」



眠そうな目で俺をみてくる 畜生、可愛い

けど気になるタトゥーを最中に見つけた



「なんだよ、あの言葉」

タトゥー自体が気に食わないわけじゃない

むしろこんな虫も殺さないような千恵美が彫ってるってのは何かエロくて良い

けど、タトゥーの言葉の意味が問題だった



“愛がないことなど知っている“



アラビア語でつづられた文字の意味に俺は不満だった



まるで俺へのメッセージ

下着を脱がなければ見えない位置にあるのが尚更だ

ちゃんと愛してる そうでなければ人間などこんなに優しくかまってやらない



「若気の至り。」

にこりと笑う

いや、お前人間年齢でも今だって充分若い

「何があったんだよ。」



体に墨を入れるのは何かしらの意味や決意、覚悟があるはず

そんな言葉を入れた理由が気になる



「スタースクリーム…」

「なんだ。」

とろんとした目で俺を見てくる

目に少しかかってる髪をのけて頬をそのままなぞった

「おやすみ」



目をとじた

寝やがった

「おい、意味は」

狸寝入りかと思えばそうでもないらしい

さっきからずっと眠そうにしてたし、仕事やらさっきのコトやらで疲れてるのもわかる



「ったく…風邪ひくぞ」

羽毛のシーツを肩の先が隠れるくらいにかけて、

そのまま静かに寝させてやることにした





最初の夜はそこまで気にはしなかった



だけど体を重ねるたびにその文字も見える



愛がないことなど知っている



どうもこの言葉が気に食わない

俺は ちゃんとお前が好きだ

決め付けられてるようで

知らないくせに知ったような感じが嫌だ



「なぁ。」

せもたれに腕をかけ斜め下にいる彼女を見下ろす

ソファに膝を抱え小さく座ってテレビを見てる千恵美

もっとのびのびした体勢で観れば良いのにと思いつつこんな姿も可愛いくて抱きしめたくなる



「何?」

目線をスタースクリームに向けると紅い目が合う



「タトゥー、消せよ」

普通なら大変だが金属生命体の手にかかれば綺麗に消すなんて簡単だ

元科学者である自分が消せないなんて事はない

実際自分もタトゥーをしてるし、それを刻んだのは自分だ



「このままが良い」

シュンとする表情はエサをおあずけにされた子猫みたいだ

訴えるような、悲しそうな

「けど、ヤるたびにあの文字が見えちゃ良い気しねぇ」

負けそうになるがぐっとこらえる



「ごめんね。気にしなくて良いから。」

自分の体にどんなモノを刻もうが勝手とはスタースクリームもわかっているので

これ以上は言わなかった

でもせめて過去に何があったかくらいは、と彼女を見るともうテレビを楽しそうに観ている



聞く気にならずスタースクリームも隣に座り一緒にテレビを観始めた









「なぁサウンドウェーブ」



食堂でコーヒーを飲んでるサウンドウェーブに話しかけた

「なんだ」

いつもと様子が違うのに気づいたサウンドウェーブはちら、と2を見る

「あいつの…千恵美の過去を調べてほしんだが」

何事かと思えば彼女絡みの悩みらしい

「自分で聞けば良いだろう。」

あきれたのかコーヒーを片付けに椅子から立ち上がる



「聞けない過去も知りてんだよ。」

「…女々しい奴だ。」

この野郎、と言いそうになるがぐっとこらえる

「頼むぜ。」



ため息をつくサウンドウェーブを見送ると自分も食堂を後にした





数日後、情報参謀からの情報収集を終えたと通信で入る



「わかったのか!?」

走ってきたのか髪はあっちこっちに乱れなんともまぬけな格好

「…データを送ろうと思ったのだが」

だから、わざわざ来なくても

そんな事がわからなくなるくらいに千恵美の事で頭がいっぱいだった



「…送ってくれ。」

気づいたのか罰の悪そうに髪をくしゃくしゃと片手で整え来た道を戻っていった



「少しショックを受けるかもしれない。」

その言葉にピタ、と足をとめるが「かまわない。」と言って再び歩き出した





サウンドウェーブから送られてきた情報をいったんは見ずにしまった

そして自分の自室で1人になりそのデータを開く





データの文字には虐待、性的暴行、売春、自殺未遂などどれも千恵美からは

想像つかないような言葉が並んでいた



そしてホテルの映像

千恵美と知らない男が抱き合ってる



たまらず、その映像の再生をやめ別のデータを選ぶ



関わった1人の男の情報には≪千恵美を脅し売春をさせその金で遊んでいた≫

別の男の情報には≪暴行を加え無理に従わせていた≫

そして≪千恵美を利用し犯罪に加担させた≫などの情報があった



千恵美が昔書いていた誰にも観覧出来ないようにされてる日記があった

開くと、こんな事が書かれてあった



「「愛されてると思ったのに」」

「「死に切れなかった」」

「「逃げれない 死にたい」」

「「誰も信用できない したくない」」



これと同時期に書いてある別の日記

友達用らしくそこには「「今日のテレビ面白かった♪」」「「明日は買い物しよっと!」」など

まるで何もないかのように楽しそうに書かれていた





こんな過去があるとは思いもしなかった

それを誰にも言っていない、素振りを見せない千恵美はずっと独りで耐えていた



「「うぬぼれないように、気づけるように今日、背中にタトゥーを入れた」」



非公開日記には彫った日にそう更新をしてあった



自分を抱く全ての男に

愛がないことなど知っている

そう言って相手との距離や気持ちをシャットアウトし



もう酷い目に合わないように自分を戒める言葉だった





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