■その他キャラ■

□【一瞬の偽善の願い】
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警官に成り済まし人間を偵察してこいとメガトロンに言われ適当に歩いていたバリケード


「おねーちゃぁーん!!」

少し遠くの方で小さい女の子が泣く声がする

耳障りだと思い方向転換したとたん「おまわりさん!」と後ろからその女の子の声

「おまわりさん、わたしのおねぇちゃんさがしてください」

手を取り反対側にひっぱる女の子

「おい。俺は今忙しんだ。虫けらなど探してる暇などない。」

手を振りほどくと女の子は顔を歪めグスグスと泣き出してしまった

「おまわりさんはヒーローなのに…」

涙目でバリケードを見つめる

「……」

少ないが周りの視線を集めているしメガトロンからはまだ目立つ行動をするなと言われている



「何で俺がガキの子守りなんか…。おい、探してやるから泣き止め。」

ぐすんと肩を震わせる女の子はまだ泣き止まない

「おい、探すと言ってるんだ。」

「ふぇ…」

少し強い口調で言うとまた泣き出す

自分の言い方が強いのだと気付きバリケードはめんどくさそうにため息をつく

「あぁ…悪かった。ねぇちゃん探しに行くぞ。」

少しだけ優しい口調にすると女の子はニパッと笑いバリケードの手を握る

「、おい」

とても小さく、柔らかく温かい

あまりにも小さな手なので握り潰してしまわないかと不安になる

最小限の力加減で少しだけ握ると女の子は嬉しそうに歩き出す


「おねぇちゃんとはね、あそこら辺ではぐれたの。」

指をさす方向には少し複雑な小道がいくつもある道路


小さな子が迷ってしまうのも無理はない

2人は小道を歩く

「わたし、千恵美っていうの。おまわりさんは?」

「…バリケード。」

虫けらの子供の名前なんてどうでもいいと思いつつ答えてあげる

「ばりけーどおにいちゃんはきょうだい居る?」

「居ない。」

「わたしはねぇ、いたんだけどしんじゃったんだって。
だがらいとこのおねぇちゃんとくらしてるんだ。」

この様子だと死ぬという意味はまだわかってはいない


「親もか。」

「うん。シカゴのせんそうでお母さんもお父さんもおねぇちゃんもしんじゃったの。

まだかえってこないからさびしいけど、おねぇちゃんが居るからたのしいよ。」

ニコニコと話す女の子

バリケードは少しだけ握る手を緩めた

自分達が起こしたシカゴの戦いだろう

人間が大勢死んだ事など自分には関係ないが

目の前に居る何の罪もない小さな子供を苦しめていると思うと今までに感じた事のない感情が回路を一瞬駆ける

「わるものが、まちに来たんだって。

ばりけーどお兄ちゃんはいつかそのわるものをやっつけられる?」

少し黙ったが、あぁとだけ答えた


角を曲がった時、「千恵美!」と女の子を呼ぶ声がした

「おねぇちゃん!」

手をほどくとすぐに駆け寄り女性に抱きついた

「もう!1人で先に歩いちゃだめでしょ。」

「ごめんなさい。」

女性はバリケードを見ると「ありがとうございます。」と頭を下げた

「ばりけーどお兄ちゃんがね、シカゴのわるものをやっつけてくれるって!」

嬉しそうに女性の手を握りバリケードを指さす


「すみません、変な話したみたいで…警官や迷彩柄の人はヒーローに見えるみたいで。」

「…そうですか。」

少し目線を落とすと屈託のない笑顔の千恵美と目が合う

「お兄さんにバイバイして。」

「わるものやっつけるの、やくそくだよ!バイバイお兄ちゃん!」

女性は頭を下げ、千恵美は手を大きく振ったので少しだけバリケードも手のひらをユラユラさせる


さっきまで繋いでいた小さく温かい感覚がはっきりと残る自分の人間の形をした手のひらを視界に入れると同時に

戦闘してきた本来の自分の姿の手を思考回路内で重ね合わせた






「しっかり手を繋いでやってくれ…」



誰にも聞こえない言葉をぽそりとひとつ、声に出す





遠くなる2人の背をしばらく見つめ、やがて自分も反対側に歩き出した





ヒーローと呼ばれた俺は
あの子供さえも
この手でいつの間にか殺してしまうんだろうか

その脆く弱々しい手を
離さずそばに居てやってくれ

今だけ
せめて今だけは


この偽善の感情で居させてくれ






end


子供にちゃんと優しい一面も見せるバリケード書きたかった。きゅん

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