■その他キャラ■

□【ここに、居るから】
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「スティンガー」
強いショッキングピンクの髪色をしたスティンガーにぎゅ、と抱きつくと彼は嬉しそうに受け入れ目を細めた

スティンガーはCIAが作り出した人口トランスフォーマー
オートボット達との戦いで生き残ったスティンガーにはガルバトロンが消えた今戦う理由などない
それは同時に生きる理由もなくなる事を意味した

生み出されて半日でスティンガーは孤独になった

CIAは人口トランスフォーマーを最初は殺すように動きだしたためしばらくは人間からもオートボットからも逃げる日々が続いていたが

千恵美に助けられ今は千恵美の家やNESTの中で安全に暮らせている

「今日ちょっと友達と遊んでくるから家空いちゃうんだよね。
NESTに行けばオプティマス達居るけど、たまには私抜きで司令官と話してみたら?」
スティンガーはふるふると首を横にした
元は敵という事や千恵美にしか心を開いてないという事もあり千恵美が居なければオートボット達とは会わない

オプティマス達はスティンガーを受け入れてるが本人がまだ馴染めていない

「寂しくなったら電話していいからね。
何かあったらオプティマスとかNESTの人に連絡するといいよ。レノックスさんとか信頼出来るし。」

寂しそうな表情はまるで今から捨てられる子犬のようでちょっと家を離れるだけなのに心が痛む

「帰れる時間になったらメールいれるからね!」

パタンとドアを閉め外に出た千恵美


千恵美が居なくなるとスティンガーは決まって千恵美のベッドでうずくまる

香りが安心するからだ

抱きしめてくれる時のふんわり香るあの香りと同じ

それから数時間が経ち夕方になっていた

夜が近づくにつれスティンガーはだんだん不安になってくる

もしこのまま千恵美が戻ってこなかったら

自分を見捨ててしまったらと考えてしまい怖さと寂しさでシーツをきゅ、と掴む

携帯が鳴るとスティンガーはすぐに手に取った

<<もうすぐ帰るね!待ってて♪>>

ようやくベッドから起き上がり足早に階段を降りるとスティンガーは玄関のドアの前で千恵美の帰りをずっと待つ


千恵美の足音が聴覚センサーに届くとそわそわし出す


カチャりとドアが開いた

「ただいまスティンガー!」

「おかえリ。」

両手には可愛いショッピングの袋
ソファの隣にドサっと置くとそのままソファに倒れこむ

「疲れたぁ。あ、ビーからメール。」
何件かオートボットからメールがきている

千恵美は返信し終えるとスティンガーが不満そうな顔でこちらを見てるのに気がついた

「どうしたの?」
「…」
顔をしかめてると思えば今度はシュンとする

スティンガーはあまり自分の意見を言おうとしない

元々は意思表示など必要のないただのロボットだったので話すことが得意ではない


スティンガーはそのまま自分の部屋に行ってしまった
自分からこうやって離れる時はだいたい言いたい事が言えなかったり、思い通りに行かない時だとだんだんわかってきた

「もう…」

千恵美は立ち上がりスティンガーの部屋に入る

「ただいまのハグしてなかったね。」

ベッドに座ってるスティンガーを抱きしめたら千恵美に身を寄せる

機嫌が直ったかのように表情は穏やかになった

「たまにはスティンガーから抱きついて欲しいな〜。」

そう言うと困ったような表情で千恵美を見る

千恵美はこの反応の意味がわかっていた


自分から抱きついていいのかまだ戸惑っていると

本当は嫌だったり、嫌われたりしないかスティンガーは不安だった

誰にも必要とされなくなった時期が深く心に残っており、自分は要らない゛物゛として認識している

それも意思表示出来ない原因だった

「私はいつだってスティンガーから抱きついてくれたら嬉しいけどな。鬱陶しいなんて思わないよ。」

にこりと笑いかけて手を取る

「さ、ご飯作るの手伝って!」

スティンガーも少しだけ笑い千恵美の後をついてった



夜、ベッドに入り窓から見える月をスティンガーはカメラアイに写す

逃げ続け孤独の中何度も見上げた月と星

またあの日々に戻ってしまいそうでスティンガーは思わず布団を被る


敵に追われる中

エネルギーを補給出来ず徐々に失われる体力

鈍くなる思考回路

鉄の体にめり込む弾丸


<<失敗作を早く殺せ>>

あの感覚、言葉を鮮明に思い出し酷い孤独感に襲われた

ふと、千恵美が自分の部屋を横切る廊下の足音が聞こえた

ベッドから降りドアを開けて千恵美を追う

「スティンガー、どうしたの?」

水を飲もうとリビングに居た千恵美の袖を掴む

不安そうに見つめるだけだが過去の事がフラッシュバックしてるんだと千恵美にはわかった

「今日は一緒に寝ようか。」


自分の部屋へ戻りベッドに入るとスティンガーの分を空ける

「おいで」

嬉しそうに千恵美の隣に横になる

「もう安心して良んだよ」

向かい合って月明かりでわずかに認識できるスティンガーを見る

「私はどこにも行かないから。必ず戻ってくるから」

スティンガーは千恵美の声とそばに居る安心で目を閉じ、スリープモードに切り替えた


可愛い寝顔は何度見ても可愛く、すごく控えめに甘えてくるスティンガーが愛らしい

同時にもっと自分から言葉や表現が出来るようになったら今までよりかは不安な気持ちは和らぐのにと思った





いつか自分は孤独ではないとわかってほしい
あなたは私にさえも置いていかれるような不安を感じている

どれだけ孤独に追いやられ
消されそうになったのだろう

もう絶対そんな思いはさせないから

どうか独りだと感じないで




end

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