TF―長編完結

□【痛みと恐怖】
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鉄化を治す薬を開発するために、まず香波はどういう体質なのか

なぜ感染しないのかを調べる必要があった



「またあの思いをさせる事になるが…良いのか?」



調べるにはどうしても鉄ゾンビからの直接の攻撃を受けなければいけなかった

そしてそれは鉄ゾンビの種類によってどう変わるのかも調べなければいけないので

数回に及ぶ攻撃を受ける必要があった



「…大丈夫」



死ぬわけではない

攻撃を一発受けるだけ



実験室に膝をついたオプティマスに抑えられた鉄ゾンビの目の前に香波は立った





「私がしっかり抑えているから一発以上の攻撃を受ける事は決してない。

香波のタイミングで良い。怖いなら他の方法で薬を開発させる。」



胴体と片腕をしっかりおさえたオプティマス

薬を開発してくれとは言ったものの香波がこんな目に合うとは思っていなかった

それは他のオートボット達も同じだった



だがこの方法以外で開発するとなると倍以上の時間がかかるので

香波自らこの方法で良いと言ったのだ



オプティマスは鉄ゾンビの片腕を自分らで掴み、わずかなかすり傷にすれば

香波への負担は相当軽くなると提案した



だがそれでは意味はないとラチェットは答えた

あくまでも鉄ゾンビの本能で傷をつけられる事に意味があり、

そのやり方では実験の結果が確かなものではなくなると…





片腕だけ自由に振り回せる鉄ゾンビは大きく腕を縦に振ったり横に振ったりと

目の前の香波を襲おうと唸っていた



どれくらいの深手を負うかはわからない

当たり方次第といったざっくりしたものだった



香波は少しずつ鉄ゾンビに近づいた

近くなると鉄ゾンビはさらに腕を大きく振り上げる







実験室の中を窓ガラス越しで心配そうに見つめるオートボット達

キュウウと鳴くバンブルビー

「酷だな…」

サイドスワイプが呟く



「ラチェット、あいつの体調をしっかり管理してくれよ。

香波は無理にでも大丈夫と言って実験を進めかねない。」

アイアンハイドはラチェットに念を押す



「あぁ。充分わかってるよ。最小限負担を抑えられるようにする。」









香波は片腕を出し距離をさらに縮めた

そして鉄ゾンビの腕が香波の腕を引っかいた



「痛っ…」



それと同時にオプティマスは後ろに鉄ゾンビを引いてもう届かないように距離を置く



「香波、大丈夫か」

鉄ゾンビを抑えてない方の手で香波の肩にそっと触れるオプティマス



「バンブルビー、すぐに香波を医務室のベットに運ぶんだ。そっとな。」

実験室のドアが開きバンブルビーはダッシュで香波の元へと急いだ



「_傷が_痛々しい_すごく心配だ」

壊れ物を扱うかのようにそっと両手の手の平らに乗せる

「大丈夫…熱が出るだけだから」

心配そうに見つめるバンブルビーに笑いかける香波





怖かったけどオートボット達が居るおかげで落ち着ける







急激に体温が上がって意識が遠のいていく

香波は心配そうに覗き込むバンブルビーやオプティマスをぼんやり視界に入れながら目を閉じた

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