征す者、愛す者
□2. 近づきたいから
1ページ/2ページ
◆
元気よく、花咲くような笑顔を見せてくれたキミを、俺はすぐに気に入った。
初めて会った日は、すぐに別れてしまったけれど...
つぎの日に。
またあの笑顔が見たくて、つい父さんと母さんに “ 芙裕希ちゃんに会いたい ” だなんて、せがんでしまった。
−そんな俺の我がままに対して、父さんと母さんは嬉しそうにしていた。
どうやら、芙裕希ちゃんも
同じ事を言っていたようだ。
...嬉しいな。
◆
あれから私と征十郎くんは、
お互いに気に入ったようで。
よくお互いにおねだりをして、
お互いの家に遊びに行っていた。
小学校が別々だったので、
多くは遊べていないけれど、
ちいさな思い出をたくさん重ねていった。
征十郎くんの大好きなバスケットボールで遊んでみたり、たくさんお話をして、お散歩して、たまにお馬さんに乗ったりして。
3年生くらいになった頃。
私は、ちょっとだけ勇気を出してみた。
もうちょっとだけ、あなたに近づきたかったから。
『ねぇ征十郎くん!』
「何かな、芙裕希ちゃん?」
−言うぞぉ、言っちゃうんだから!
『えっとね......』
少し照れている私を、征十郎くんは
まっすぐに見つめてくれている。
その眼差しは、どこか期待が含んでいるように感じた。
『−… “ 征くん ” って呼んでもいい?』