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□熱中症
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あつい、とは思った。
でもそれは夏島だから当たり前だ。
私が長袖を着ているというのもある。
ナミとロビンが水着で船上に(サンジに)置かせたビーチチェアに寛いでいるのを遠目に見る。
砂がブーツに絡まるのを波で洗う。ブーツ越しじゃ海の冷たさなんてわからない。少し離れたところでルフィとウソップとチョッパーがボールで遊んでいる。
森の方へと視線を移す。大きな獲物の気配がする。うん、今日はバーベキューなんかでも良さそう。
食欲にそそられて森へ入る。
気配は二つ。気配を追っていけば、私より数十倍も大きそうな巨大な猪が二匹いた。もしかしたら夫婦かもしれない。
腰の刀を抜いて猪にゆっくり近付いた。




***



「おっ、起きたか!」

気が付くと日陰でルフィが私の顔を覗き込んでいた。
理解が追いつかなくて言葉を発するのも忘れる。
視線をルフィから外すと、一番に飛び込んできたのは地面に倒れる二匹の猪だった。一匹は斬られて、もう一匹は殴り倒されたようだ。

「あー…」
「名前?」

一匹は倒した記憶が確かにある。しかし、もう一匹と戦闘になってからの記憶が薄い。
暑くて、寒かった。

「熱中…症……」

ぽつりとつぶやいて目を閉じる。
するとふに、と唇に柔らかいものが当たった。
何事かと目を開けると間近にルフィの黒い目があって、思わず身体を跳ね起こすと頭と頭がぶつかった。

「痛……ッ!?」
「おい、大丈夫か?」
「……は?えっ?」

あまりにも平静なルフィに目を白黒させる。
え?今のは一体、何?

「何って、ちゅーだろ」
「あ、え?声出てた?………え?何で?」

互いに頭に?を浮かべる。
待って、本当にわからない。

「お前がしようって言ったんだろ」
「…………………」

オマエガシヨウッテイッタンダロ?
思考を巡らせる。私なんか言った?気を失ってる間とか?いや、そんな………………

「熱中症!!!!!」
「何だ?もう一回するのか?」
「違う!!」

合点がいったのと同時に顔が熱くなって力が抜ける。
はぁー、と深くため息をついて元の位置に体を倒す。
何気なく頭置いたけど、ルフィの膝の上だった。

「…もうちょっとこのままでいい?」
「ああ、いいぞ」
「……何でちゅー、したの?」
「ん?したかったから」
「ルフィ、私のこと好きなの?」
「何言ってんだ、当たり前だろ」
「……………」

もう一度深くため息を吐く。
どうせ家族愛と恋愛の違いなんてわかってないんだろう。
たぶんルフィは変わらない。──対して、自覚してしまった私は。

「ねえ、ルフィ」






ちゅう、しよう。



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