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□傷痕
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考えるより先に体が動いてしまうというのは、もう生まれた時からの性分だ。
それ故に怪我が多いのも承知の上で、それで今まで生きてこれたのだから、今更他人にああだこうだ言われてもどうしようもないのだ。

「まあ、今回も生き残れて良かった良かった…痛ッてぇ!」

地面に転がる俺にジョルノが『G・E』を施す。
治される、というより傷口に無理矢理異物をねじ込まれる感覚に近い。
ミスタは痛がりすぎだと思うが、確かに痛い。

「君の動きには無駄がありすぎる」
「早急に治療系のスタンド使いを仲間にするべきだ。痛くないヤツ…ぃッッてぇなオイ!!」
「この傷も、この傷も、殆どが無駄な傷だ。君が一人で無茶に押し切らなければこんな傷、出来なかった」
「それで敵倒せたんだからいいだろ。しかもお前に怪我がないんだから。…痛…づぁ…ッ!」

一際大きな痛みに体を丸める。
動くなとジョルノが言う。
こいつわざとやってないか?本当は痛くないように出来るんじゃあないか?
訝しみながらジョルノの顔を見上げるが、真剣な顔で残りの傷に『G・E』を施してくれるもんだから、俺も黙って痛みを受け入れる。

「終わりましたよ」
「ッ…グラッツェ」

ようやく治療が終わって肩の力を抜く。
溜息を吐きながら体を起こして肩を回す。痛みはもうない。
よし、帰るかと立ち上がろうとすると、神妙な面持ちでジョルノが口を開いた。

「話は変わるんですが、僕の能力は生命を創ることが出来ます。持ち主を失った生命は、僕の元へ帰ってくる」
「何、今更」
「君の身体の全てが、僕のものになる。──そんなことにならないといいですね、名前」
「…は?」
「帰りましょうか」

待て待て待て待て、何?今の言葉?怖いんだが?
ジョルノが無駄に整った顔で意味深に笑うもんだから、腹の底がムズムズする。
その後、どう詰め寄ってもはぐらかされるままアジトに着いてしまう。
ジョルノに促されるまま身体についた泥やら血やらを流すためにシャワーを浴びる。

「ったく、意味わからんこと言いやがって…」

思い出しては何だか言い知れない恐怖にぶるっと身震いする。
……別に、死ななきゃいいじゃあねえか。
鏡の自分と目が合う。ふと、首元に視線が行った。
首筋に小さな赤い痣。

「なんだ…?」

鏡の水滴を手で拭う。
よく見れば身体中にそういう痣が点々とある。
虫刺されの可能性も過ぎるが、下腹部に大きくあるこの痣は、忘れもしないジョルノに治してもらった傷と全く同じだ。
わざと肌に、明らかに浮くように赤い痕となって、俺の身体に永遠に残るのだろう。

「あの野郎…ッ!」

君の身体の全てが、僕のものになる。──そんなことにならないといいですね、名前。
首の痣に爪を立て、舌打ちをする。

「キスマークのつもりかよ」

永遠に消えないだけ質が悪い。
ジョルノのあの笑顔が思い出されて腹が立つ。

「覚えとけよ、ジョルノ…!」






キスマーク



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