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□しあわせ
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「ああ、ジョジョ。もうすぐ誕生日ですね。良かったですね。名前から解放されますよ」
「……何だって?」

何気なしに日付を確認したフーゴから漏れ出た言葉にジョルノは耳を疑った。
フーゴの言葉に間違いはない。
4月4日である今日はエイプリルフールでもなんでもなく、あと数日で自分は誕生日を迎え、16歳になる。

「解放される、とは?」
「僕も尾け回されてましたからね。うんざりでしたよ」
「言っている意味がわからない。フーゴ、詳しく説明を」
「だから、彼女からストーカー被害、受けてるでしょう?彼女が興味があるのはキッチリ15歳以下なので、16歳になれば解放されるって言ってるんです…って、どこ行くんですジョジョ!?」

話の途中で勢いよく部屋を飛び出していったジョルノ。
部屋に残された大量の確認書類にフーゴの額に青筋が浮かんだ。



***



「だぁから、今日は外には行かねーって言ってんだろぉー!?」
「頼むよお願い、一生のお願い!!今日逃したらもう二度と手に入らないの!!何のために私が今日休みにしてもらったと思ってんの!?」
「知るかよ!別のやつに頼めよ!」

ミスタが今日は一歩も外に出ないと決めて清々しくベッドから起き上がった直後に地獄のようなチャイムは鳴った。
「ミースーター」と陽気に呼ぶ声に嫌な気配しかせず無視をしていたが、チャイムは鳴り続け、次に激しいノックが続き、最終的にはスタンドで鍵を開けて入ってきた。
そして第一声、「プリン買いに行こう!」

「だってトリッシュってば急に仕事入っちゃってぇ〜フーゴもジョルノと仕事だし…私他に友達いないし…頼れるのはミスタだけなの!」
「お前は子供か?プリンくれぇ一人で買いに行けんだろうがよぉ」
「だってお一人様一つなんだもん!!『しあわせのプリン』!4月4日限定販売なの!日本の有名なパティシエの超美味しいプリン!!その名の通り幸せになれるプリン!!それを!!それを私はジョルノの誕生日プレゼントにあげて一緒に食べたいの…!!」

んなことだろうと思った、とミスタは深いため息をつく。
ジョルノ本人にストーカー行為がバレてから名前は"推しを推す"という行為を隠さなくなった。
実のところ、ストーカー行為がバレるのはこれで二度目である。
スタンドによるストーカー行為、一般人であれば見える筈もないのだが、スタンド使いであればバレる。
それが一度目、フーゴだ。危うくパープルヘイズで殴られるところだった。
その時はブチャラティにも叱られ、フーゴへのスタンドによるストーカー行為は名前なりに自重した。だがそれでも、彼が16歳になるまでは一緒にいるときには視線は外さなかったが。
それとは反面、ジョルノは名前のストーカー行為を容認しているので、名前も遠慮はしないことにしたらしい。

「だからそんなわけで、一緒にプリン買いに行くからほらさっさと着替えろ!!」
「だぁあああ!止めろ!!脱がせようとするんじゃあねえ!このスケベ女!」

起きたままの服を脱がせようと掴みかかってくる名前に対抗するミスタ。
互いにパワーのないスタンド故に勝敗を決するのは純粋に力の差である。
しかしそこは男と女。ミスタはあっさりと名前を押し倒してしまえた。
だがミスタは気づく。そこがベッドであることに。そして、名前の髪にたった今蝶が止まったことに。サアッと血の気が抜けていく。

「あ、失くしてたヘアピン」
「何をしてるのか、説明してもらおうか…ミスタ」
「ちっ、ちげーよ!?勘違いすんなよジョルノ!!初めはこいつが…!」
「話は後日、聞きますから」

慌てて名前から距離を取ったものの、氷点下より冷たい表情のジョルノに話を聞く耳はないようで、名前の手を取って部屋を後にしてしまう。
やはり4は不吉だ。ミスタはジョルノたちが去っていった扉の鍵を固く閉めた。
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