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□酔っ払いの戯言
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傲慢で人使いが荒くて俺様で傍若無人。勝つためには手段を選ばない。どちらかといえば悪人。
でも私はディエゴのことが嫌いじゃない。じゃなきゃ四六時中一緒にいたりしない。
何で?……まあ、顔はいいからね…。黙ってれば綺麗な顔してるし…。でも声も良いよね。程よく低くて心地いい。あと普通に頭良いしね…。それとスタンド?能力を手に入れてからはちょっとワイルドだ。いいよね、恐竜。
あとは本当に時々だけど優しい時もある。本当に時々、気まぐれなのかもしれないけど。一応、一応紳士。デートしたらどんな感じかな?いや別にしたいってわけじゃあなくて…いや、出来るならしてみたいけど。うん。
あと、それと、えーと──…、え?好きかって言われたらそりゃあ──

「朝だ、起きろ名前」
「う、ぅ…あと五分…」
「起きろと言ってるのが聞こえんのか」

グキッと首に鈍い痛みが走って強制的に目が覚めた。
ついでにベッドから落ちてそれも痛いし、頭も痛い。
床が冷たくて気持ちよくてそのまま寝転ぶ。

「おい、邪魔だ」
「ディエゴうるさい…」

ディエゴが私を蹴るのを避けながら、身体を丸めて腕を伸ばす。
寝ていた時に何かにしがみついていたらしい。何も抱えるものがなくて物足りなさに起き上がった。

「んー、何で私ディエゴのベッドにいるの?」
「知らん」
「昨日一緒に呑んでたよね?」
「俺は先に寝た」
「君の祝勝会なのに…」

貴様が酒を飲みたいだけだろう、と突っ込まれれば返す言葉もない。
あー、待ってほんと頭痛い。何も考えられない。

「ディエゴお水ちょうだい…」
「そら」
「え、あ、え?あ、ありがと…」

目の前に置かれた水差しとコップに戸惑いを隠せない。
ディエゴが朝からこんなに優しいなんて、今日は槍でも降るの?

「熱でもある?」
「さっさと用意しろ。出かけるぞ」
「えー…頭痛いのに…なんか約束してたっけ…」
「俺の気が変わらないうちに早くしろ!」

優しさから一変して怒鳴り声が二日酔いの頭に響く。
今朝はいい夢でも見たのかしら。

「もう…ディエゴいちいち声が大きいんだよ…。もっと、こう、囁いてくれる?囁くくらいがちょうどいいよ、君はさ…。ほら、恋人に愛を囁くように、優しく」

言いながらふふ、と笑ってしまう。
ディエゴがそんなことするかな。したとしても絶対裏がある。ふふ、怖。
洗面所で冷たい水を顔に浴びれば気分もサッパリ。
タオルで顔を拭いて鏡を見るとディエゴが私の後ろに立っていてめちゃくちゃ驚いた。

「うわぁあ!!びっっっ……くりした…!!なに、どうした?」
「名前」
「ハイ!?」

振り向いた私をディエゴが洗面台と挟む。
えっ、なになになに!?
ディエゴが私の頬を撫で、横の髪を耳にかける。
何だか真面目な顔をしているので無駄にドキドキする。近くで見れば見るほど綺麗な顔をしている。
不意にディエゴの顔が近付いてきたので反射的に目を瞑ってしまう。

「愛してる」

まるで恋人に囁くような、聞いたこともない優しい声音はするりと心に入ってきて、私の心臓を攻撃する。
顔が燃える。熱い。
目を開けるとディエゴと目が合い──奴は鼻で笑った。

「かっ、からかった!?」
「フフ、ハハハ!予想以上に赤いぞ」
「本当最低!」

満足したのかディエゴが離れていく。
ちょっとでも期待した私が恥ずかしい。くそくそ、まだ顔が熱いのが悔しい。

「貴様、本当に昨夜のことを覚えていないのか?」
「は?」
「──からかったつもりはない」
「…………へ?」
「早くしろ」

それだけ吐き捨ててディエゴは行ってしまうから、洗面所で腰抜かした私だけが取り残された。

「待って今のどういう意味!?」






昨晩の出来事。
(ええい、ここで寝るんじゃあない!)(わたしぃ、ディエゴのことがぁ、好きなんだよねぇ)(は?)(好きなとこはねぇ、いっぱいあるんだよぉ)(おい待て、貴様)(ねえ、明日デート…しよ……)(寝るな!!!)



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