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□ティータイムをご一緒に
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DIOとは長い付き合いになる。
DIOがジョースター家に来てからになるから、もう百年だ。
DIOがジョジョに喧嘩売って負けて、吸血鬼になって波紋戦士に負けて、首だけになったときも見ていた。
ジョジョが死んだ船には乗らなかったけど。
俺はいつも傍観者だ。DIOのことは友人として好きだが、DIOのやろうとしていることには興味がない。ジョジョとも友人だったしな。あいつらの喧嘩に俺が介入する筋合いはない。どちらかと言えば俺の性質はDIO寄りだったらしい。
──とまあ、それは置いといて。話は変わるが。
閉ざされた部屋の前に投げ出された裸同然の乾涸びた女らしきものにため息をつく。

「テメェDIO何遍言ったらわかるんだ!?死体の処理が面倒だから殺すなって言ってんだろうが!!」
「ノックぐらい出来んのか貴様は」

ドアを蹴破って怒鳴れば、あいも変わらず薄暗い部屋で無駄に豪華なベッドに優雅に寝転がっているDIOが眉をひそめてこちらを不機嫌そうに見やった。
両手が塞がってるんだから仕方がなかろう。

「小言に小言で返すんじゃねえ。そんなこと言う奴はもうおやつ抜きです」

両手に持った大量のケーキの皿をテーブルに置いて二人がけのソファに足まで乗せる。
ちなみにこの大量のケーキは大半は俺のだ。買ってきたものから、テレンスが作ったもの、自分で作ったものまである。人間だった頃から大の甘党で、食うのも作るのも趣味だ。
DIOにはもちろんエリナやジョジョにも俺主催の茶会に付き合わせてた。それは今も変わらない。今はDIOだけになってしまったが。
大半は俺が食うが、DIOも毎回付き合ってくれるあたりこの時間は嫌いではないのだろう。

「お前も節度ってもんを覚えろよなー。女は腐るほどいるけど、数は限られてんだから。その内お前に釣られてくる女もいなくなるぜ」
「貴様に節度がどうのだと言われたくはないな」
「テレンスのケーキ美味ッ!お前いい部下持ったなぁ。痛ッッッて!!」

DIOが俺を蹴り落としてソファのど真ん中にに座り、俺が自分に淹れた紅茶を躊躇なく横取りする。

「お前俺をもっと丁重に扱えよ!俺が家出したら困るのお前だからな!お前が首だけの時にあーんしてやったこともジョースターにバラしてやるからな!」
「やはり貴様を生かしておいたのは間違いだったな…」
「それは百年前に俺を吸血鬼にしちゃった自分に言ってくれ。俺も別に百年生きたくはなかったけどな」
「よし、ならば殺すか」
「おおっと別に死にたくもないからな!俺が死んだらお前の資産管理誰がすると思う!?」
「テレンスあたりがやるだろう」
「カーッ!これだよ!お前が死んだら全財産世界の貧しい子供にお前の名前で寄付してやるからな!痛ッッッッてぇ!!」

ソファに戻ろうとしたら顔面に裏拳を喰らった。
不愉快だと言わんばかりに舌打ちまでされる。
なまじ簡単に死なない体になったんで、多少乱暴に扱われるのも慣れてきたとはいえ、ボカスカ殴りやがって。
DIOを押し退けてようやく二人並んでソファに座る。
さて、語ろうかというときにノックの音は響いた。

「──DIO様。ジョースター一行がこちらの部屋に向かっております」

少し前にジョースター達の侵入を迎えにいったはずのテレンスの声じゃない。
ということは、あいつは負けたのか。

「来たか…」
「さっさと戻ってこいよ」
「当たり前だ」

並んで座ったのも束の間、DIOが席を立つ。
俺はスタンド能力も持っていなければ、腕っぷしも強くない。
吸血鬼となってからも、自慢じゃないが血よりも糖分の方が多く摂取していたくらいだ。
一人残された部屋で、ケーキ片手に目を閉じる。
テーブルを囲む、俺とDIOと、ジョナサンとエリナ。そこにジョセフと承太郎の一行も加える。

「………フ、ないな」

どう考えてもDIOが孤立する。
ジョナサンが気を遣って話しかけては苛立つDIOが安易に思い浮かぶ。
猫被ってたときなら仲良くやれるだろうか。

「それじゃ意味がない」

瞼を開く。
独りで食べるケーキは味がしない。
カーテンに閉ざされた窓を開け放つ。
この部屋は陽射しがよく当たる。

「早く帰ってこないとケーキ食っちまうからな」






ティータイムをご一緒に
(SPW財団が突入した時、そこには灰と食べかけのケーキだけが遺されていた)



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