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□残念な女
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「………ジョルノってさぁ…美しすぎんか?」
「あ?」

ソファに寝そべって何やら考え事でもしていたと思っていたが、急に名前はため息と共にそんなことを言い出した。
思わず銃の手入れを止めて名前の方に目をやる。
天井を仰ぎながらまたため息を吐く名前に顔を顰めずにはいられなかった。
どうせまたスタンド能力でジョルノのストーカーでもしてるんだろう。
こいつのスタンドは小さい自分を量産し、スタンドが見聞きしたことを本体と共有することが出来る。

「16歳の癖に何もうあの、何?やべえ〜〜しんどぉ〜〜〜」
「お前の語彙力の方がヤベェよ」
「顔の造形が良すぎて最早人間か?天使なのか?彼は天使なのではないだろうか?若しくは悪魔?人を惑わす悪魔?あ、吸血鬼とかの方がしっくり来るかな?」
「いや知らねぇよ」
「はあ…っむり……、しんどすぎてむりみがはげしい……、ぜんぶひらがなでしゃべっちゃうくらいにむり……」
「お前が何言ってんのか全然理解出来なくて怖ェよ」
「いいよ、ミスタには一生わからなくて」

またため息を吐く名前。名前はこういうことが多々ある。
ジョルノの前では「仕事出来る女」を装っているが、ジョルノのいないところではこんな風に語彙力が消え失せる。
確かにジョルノには人を惹きつけるカリスマ性っつーものがあるとは思うが、コイツのはそれとは何か別のもののような気がする。
好きな俳優に熱を上げてるみたいな、そんな感じだ。

「今さぁ、ジョルノどこにいると思う?」
「学校じゃねえの」
「そう。その図書室」
「………」
「今移動式階段の上で本選んでるんだけど、……脚が……長い……」
「お前マジでその頭何とかしとけ?」
「あと指も長い……」

わかっちゃいたが、真剣な顔で何言い出すかと思えばマジでくだらねえ。
ジョルノが加入してきた時からその片鱗は見せていたが、あの時は同じ時間を共にすることも多く隠してたか、今は離れることが多くなった分、あの時の数倍酷ェ。
昔から「美少年」とやらには煩かったが。

「つーか仕事しろよ」
「嫌だな、ジョルノのスト…護衛してるじゃん」
「お前のチビスタンドじゃ数はいても護衛向きじゃねえだろ」
「チビスタンドはミスタに言われたくないし、一体くらいジョルノのストーカーにあてたっていいじゃん!」
「おい、ピストルズに謝れ。つーか、お前ついにストーカーって認めたな」
「煩いばか………ぁえっ、あっ、やべっ」

急に名前がソファから起き上がり、焦り出す。
ストーカーを認めたことについてかと思ったが違うらしい。

「目が合った!!待って!!怖い!!目が合った!!近付いてくる!!逃げ……ウッ」

反射的に逃げようとした(本体が逃げても意味ないだろ)名前が静止する。
どうやらジョルノにストーカーがバレたらしい。

「いや、あの、違うんです。逃げようとしたわけではなく…あの、その。用事を思い出して…え、あ…はい。命令なら…はい、待ちます……」

珍しくジョルノの前なのに慌てて敬語にすらなっている名前。今まで見つかったことなかったんだろうな。
スタンドの姿勢と合わせてか、ソファの上で正座して項垂れている。

「あ、はい。ミスタと一緒にいて…え?こっちに来る?いや、仕事サボってたわけないじゃないですか…。今日も麻薬取引してた元締め押さえて…その話は後…はい。…はい。えっ?え?一緒に仕事?ジョルノの部屋で?何で?」

名前が頭に?を浮かべながら俺を見る。
それに特に返してやることもせずに肩を竦めて銃の手入れを再開する。

「ミスタと一緒じゃダメ?あ、いや…その、はい。待ちます。待ってます。はい。ジョルノの部屋で。一人で…。はい。あ、その子はお気遣いなく…勝手に戻ってくるので…あ、連れてくる…はい、了解です…」

俺は知っている。
ジョルノが名前のストーキング行為をずっと前から認識していることも、ジョルノが名前に好意を抱いていることも、名前が今や俺にだけこういう姿を見せることに対して嫉妬していることも。
名前が立ち上がり、俺の前に来る。

「推しと二人きりで仕事するとか死の予感しかしないから骨は拾ってくれ…」
「ジョルノに拾ってもらえ」
「ウゥ…ッジョルノ…顔が、良い……っ」

左手で目元を抑えながら右手で親指を立てて部屋を後にしていく名前を見送って、俺はため息を吐く。
ジョルノの道のりは近いようで遠そうだ。




そういうところだぞ。
(常に一緒にいれば"護衛"なんかしなくてもいいですよね)
(生とテレビ越しは違うんですよ息が出来ないアッこれ無理死ぬ)



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