学園内の忍ぶ恋模様
□牛蒡
1ページ/1ページ
その日は晴天で、僕は気持ちよく町へ出掛けた。
だのに。だのに。
「出茂さんっ」
(ああもう何でいるんだ……っ)
聞いただけで虫酸が走るこの声は、やっぱりあいつで。
あいつは何が嬉しいのかニコニコと手を振りながらこちらへ走ってきた。
「お久しぶりですっ!奇遇ですね!」
「お前……なんでいる?」
「買い出しです、ああ他人の空似じゃなくて良かった……!」
(ちっ……!最悪だ……!)
大声につられこちらを注視する町人たちの中に、水軍の奴等をみつけてますます嫌になる。
僕はそうだな、と適当に返して、来た道を戻ろうとするのに。
「出茂さんはどうされたんですか?買い物ですか?」
と、こいつは馴れ馴れしく僕の手を掴んで、尚も話を振ってくる。
「ああそうさ、だから……」
「でしたら一緒に行きましょう!先日、忍術学園に行く機会があって……」
「お前は買い出し中だろう」
「大丈夫ですっ」
満面の笑みで答えるこいつの後ろで、水軍のやつらがあからさまに眉を潜める。
(どうして僕をみてるんだよ、どうみたってこいつが一方的に絡んできてるだろ!僕は引き留めてないっ)
「生憎、今僕はとある場所で働いてるんだ。小松田に構ってる暇はないんだよ!忍術学園には今は興味ない!」
「あ、じゃあ荷物を持ちますっ」
「っなんなんだよ、お前は!あの時からしつこく絡んできやがって……!迷惑なんだよ!」
ばしっと、掴んできていた手をはたく。
目の前の男はきょとんとして、後ろの奴等はますます眉をひそめて。
(勝ち取った場所から、どれだけ僕を馬鹿にすれば気がすむんだよ。そんなきれいな目で、どれだけ僕を嘲笑えば……!)
「すみません出茂さん俺……っ」
「もういい、話したくない」
「俺、貴方と仲良くなりたくて……!」
「うるさい……っ」
牛蒡*私にさわらないで、いじめないで