学園内の忍ぶ恋模様
□がまずみ
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「数馬、何か欲しいものはないか?」
ー最近、尊奈門さんに会うといつもそう聞かれる。
「特にないですよ」
そして僕も、そう返す。
そうすると尊奈門さんは目に見えてムッとするから、お茶やお菓子を出してお話しをして話をそらす。
「本当か?遠慮なんかするな」
でも、今日は長引いていた。
「遠慮なんかしてませんよ」
「ならば、してほしいことでも構わないぞ」
「えっと……」
傷の手当てをしていた手をとられて、真っ正面から見られても、僕には本当に欲しいものはない。
困り顔で周りを見渡せば、視界にはいる一輪の花。
「あれ……」
両の手をとられているから目線だけで花を教えれば、尊奈門さんは視線を花へ移して。きょとんとしたあと、頬を染めて口元を緩ませ僕をみる。
「……数馬、お前本当可愛い」
「は、花が欲しいんじゃないんですっ」
でれでれしたまま尊奈門さんが僕の頭をみるから、なんとなく何をしようとしているのか分かってしまって。
僕はあわてて否定する。
「その花、尊奈門さんご存じですか?」
「ああ、がまずみだろ?」
「……僕、貴方のおかげでがまずみを好きになれたんです。だから、もうなんにもいりません」
がまずみ*私を無視しないで