学園内の忍ぶ恋模様

□幸せなじかん
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*三木→←虎
*恋仲未満



ー僕は火縄銃が好きだ。

将来は火縄銃が研究できる、城仕えの忍者を目指しているくらいに。

火縄銃のことならいくらでも習いたいし、上達するためにいっぱい頑張りたいと思う。



ー僕は勉強が苦手だ。

テストの点数が視力検査だと言われても、
担任の先生が胃液を吐いてしまわれても、
この感情はどうにもならないくらいに。



(そう、思っていたのに・・・)





「おい、虎若!手が止まってるぞ」

「あ、はい!すみませんっ」



田村先輩は呆れたようにため息を一つ吐き、再び忍たまの友を開かれた。



(どうしてこうなったんだっけ・・・!?確か僕、今回のテストでも視力検査並みの点数で、それで・・・)



土井先生が、明日もう一度テストをすると言われたものだから、頼れる生物委員会委員長代理である竹谷先輩に教えてもらおうと5年長屋に向かって……。


(ああそうだ、向かっている途中に滝夜叉丸……先輩と、田村先輩の喧嘩に巻き込まれて……)



『すっすまない虎若!しかしこんなところでどうしたんだ?……え?竹谷先輩に?…………そんな格好で先輩の長屋に行くのは失礼だろう。僕がみてやる』

『ええっ!そっそんなの悪いですよ!大丈夫です、竹谷先輩は気にされる方ではないので……!』

爆発によりよごれた僕を拭きながら、田村先輩はそう言った。

話の流れから田村先輩のお部屋で田村先輩と二人きりで勉強を教わるのだとわかり、僕は必死に拒否してみたんだけど……。

なんやかんやで、結局田村先輩のお部屋で勉強を教わることになったんだった……。





「おい、また手が止まってるぞ」
「う……すみませんわかりません〜……」
「は?これがか?ったく、本当にアホのは組だな!」


筆をくわえてはてなマークを浮かべる僕に、田村先輩はまた呆れたようにため息を吐いた。


(……だから、やだったのに……)


昔はこの先輩が苦手だった。
でも今と比べればあの頃の方がよかった。


(どうして僕、田村先輩のことを好いてしまったんだろ……)


田村先輩に嫌われてることは分かっていたのに。



「……仕方ない、一から教えてやる」



うつむいていると、優しい声とともに頭を撫でられた。


顔をあげれば珍しく笑う田村先輩がいて、僕は思わず口を開いて凝視した。



「……なんだよその顔は」

「だって、田村先輩が妙に優しいから、」

「なっ、僕はいつでも優しいだろ!……それに、竹谷先輩のところへ行かれても嫌だしな」

「ほえ?」



なんでもない、と田村先輩は勉強を再開する。


思ったより、田村先輩の教えかたはわかりやすかった(やっぱり竹谷先輩のほうがわかりやすいけど)。

……でも真面目な横顔や火器を扱うには綺麗すぎる手、優しさを滲ませた声に勉強に集中できるわけがなく……。



僕は明日もやっぱり視力検査になっちゃうと諦めながら、とりあえずいまの幸せを噛み締めた。

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