屈折した、(愛の形)

□永
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永(けまとま)




えっさ、えっさ。幼い声が響いていた。時には空腹、蛞蝓、疲労を訴えながら、小さい三人は一緒に荷物を運ぶ。

「癒されるなぁ…」

ぽつりと、三人を見守っていた富松の耳に呟きが入り込んできた。同じく、隣で見守っていた食満の呟きだ。

「あー…可愛い。癒される…」

普段勝負勝負言っている口が、そんな言葉も綴るんだと富松は思う。
武道派。好戦的。本来なら恐怖の対象である先輩なのに、今の食満はそれではない。後輩を見守る、優しい先輩そのものだ。

「癒されるっす…」

つい富松も、そう呟いた。恐怖の対象である先輩。だのに、いつからか富松は慣れてきていた。だって、彼もまた食満に溺愛されている一人なのだから。しかも、先輩としてのみではない。
食満は富松を見つめた。責任感が強く、真面目で、気をはっている…可愛い可愛い後輩。最初は怖がられ、避けられ。段々慕ってきた、しかしやはり怖がられ。だのに、たまにこうして心を開く。

「…俺の最大の癒しは、作だな」

今度の呟きは富松には届かなかった。でも構わない。なにより、今の富松が返答をくれているんだから。

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