屈折した、(愛の形)

□ろ
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ろ(こへ時)




その背中は大きくて、すごく遠い。

「ほえ〜!」
「ああっ四郎兵衛!」
「な、七松先輩!時友四郎兵衛先輩が!」
「脱落しましたぁ!七松先輩、止まってください〜!」
「なんだと〜!?」

僕は多分、体育委員会じゃあ一番体力がない。
だから、一番七松先輩から遠い。
一番七松先輩に追い付きたいと思っているのは、多分僕なのに。

(悔しいんだなぁ)

「?なにがだ?四郎兵衛!」
「…ほえ、七松先輩…?」
「そうだ!」

目を開けると、…七松先輩じゃなく真っ白で、パニックであわあわしてるとばっと真っ白がなくなった。

「全く、なにしてるんだ?四郎兵衛!ガハハ、これだこれ!」
「あ…たおる…」
「で、体は大丈夫か?」

赤面していると、そんな声が飛んできた。
七松先輩が、何かの誘いでなく倒れた自分のところへ来るなんて、初めてだ。

「…すみませんでしたぁ〜七松先輩!」

ふがいない。金吾も倒れはしなかったのに。

「いい、気にするな!四郎兵衛、お前が今日倒れたところ、前倒れたところより大分先だったぞ!」
「…へ?」
「だから悔しくなんかない!体はもう大丈夫だな!?四郎兵衛、私も今からお前の特訓に付き合うぞ!いけいけどんどーん!」
「七松先輩!は、はい!どんどーん!」

尊敬する、この人の背中は大きくて、遠い。
けれど、だから、僕は大好きで、おいかけるんだ。

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