屈折した、(愛の形)

□風
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風(雷久) 




!原作寄り雷蔵

前の図書委員会委員長に言われたことがある。

『能勢、お前は鬱陶しいんだよ!』

悔しかったのは、言い返せない自分だ。
やり過ぎなくらい神経質なのは自覚している。だのに直せない自分にやきもきしていたのは他でもない自分だったから。

その委員長が卒業し、中在家先輩が図書委員会委員長になられても、俺は神経質な面を出さないように気を付けていた。だのに。

「久作はさ、何で僕には指摘しないんだい?」
「…はい?」
「うん、僕って結構おおざっぱだろう?」
「ええまぁ…図書委員会1おおざっぱですけど」
「だのに、几帳面なはずの君は何にも言わないからさ」

とある図書委員会当番の日。中在家先輩より苦手な不破雷蔵先輩と二人で、神経質な面を出さないように頑張っていたのに、不破先輩はそう言った。

「…不破先輩は五年生ですから」
「久作、この前5週間返却しなかった上本をボロボロにして笑いながら持ってきた五年の八に怒っていたじゃないか」

つまり、先輩だからという理由ではない。じゃあ、何故僕には指摘しないんだい?
目で訴えてくる不破先輩に、だからと言って前の委員長に鬱陶しいと言われ傷つき、自重しようとしている旨を告げれる訳がなく。

「…不破先輩だって、口煩く言われない方が良いでしょう」

けれど、口から出たのはそんな言葉だった。慌てて口を手で覆っても遅い。けれど、不破先輩はキョトンを俺を見ていた。

「何故?僕は言ってほしいんだけど。だって、その方が気にかけられてるって感じがするだろう?だから、僕にも指摘してよ、久作」

いつも通り、不破先輩は柔らかく笑った。建前だと心は叫ぶのに、ならなぜ態々面と向かって自分から言い放ったのか。

「…僕、言うとしたら鬱陶しいですよ」

やっとのことそう言えば、不破先輩はますます笑って。

「うん、言って」

と囁いた。

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