学園内の忍ぶ恋模様
□距離
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最近田村先輩と居ることが多くなった。
「虎若、まだ時間はあるし店でも寄っていくか」
「あっはい!」
それもそうだ。田村先輩は僕と同じく照星さんを慕っていて、一緒に訓練を受けているんだから。
今日は長期休みの最終日で、一緒に学園へ向かっている途中。
「しかしホントお前の村は遠いな」
「あ、はい!」
「腹ごしらいしなきゃもたないだろ」
「あ、そうですね!」
正直、こんな共通点を持つまでは田村先輩がとても苦手だった。だからすごく嬉しいんだ。だって共通点が出来たおかげで、田村先輩のことがたくさん知れたから。
「虎若、なにか食べたい物はあるか?」
たとえば、こうやってちゃんと僕の意見を優先してくれる所。なにげにしっかりしてる所。
「あ、いえ!特にないです」
「じゃあ、そこのうどん屋でいいか?」
「はい!」
ちゃんと毎回毎回僕の意見を聞いてくれる所。
「いらっしゃい!二名様ですか?こちらへどうぞー!」
「何頼む?」
「えっと・・えっと・・」
僕がのろのろしても、田村先輩は怒らないしせかさない。中々決まらない僕に、先輩は店員さんにおすすめを聞いてくれた。僕はそれにする。
知らなかった。田村先輩がこんな優しかったなんて。
「虎若はいつもこの距離を来てるのか、大変だな」
「いえ!そんなことは・・」
・・・僕は最近田村先輩のことをたくさん知れて、嬉しいけど・・田村先輩はどうなんだろう?
田村先輩はイメージと違ってたくさん話しをしてくれる人だ。田村先輩と話していると飽きないし、すごく楽しい。
反面、僕は1パターンな相槌だけしかしてない・・・。
「そういえば、最近お前手足に筋肉ついてきたし・・・距離もその原因の1つなんじゃないか?」
「へ・・・っ!?ぼ、僕筋肉ついてきてますか・・!?」
「なんだ、気付いてなかったのか」
・・・そういえば、硬い気がする。照星さんも「きちんとトレーニングしている様だな」とか言っていたような・・・・。
「やったあ!」
ついはしゃいでガッツポーズする。・・と、視線を感じた。
「田村先輩・・?どうしました?」
先輩はじっと僕を見て、つまらなそうに眉をひそめていた。
・・・もしかして、ただ話の流れで言っただけだったとか・・・。それで勝手に浮かれて、とんだかっこ悪い奴だ、とか・・・?
「せっ先輩!僕、浮かれちゃって・・!」
「・・・そんな嬉しいことか?」
「はっはい!そりゃあ嬉しいです!」
「筋肉がついてくことがか?」
「はい!」
ん・・・?筋肉がついたことはホントなの、かなあ?
「僕は嬉しくはないな。せっかく可愛い手足をしてるのに。忍者の学校にいるんだし、筋肉なんか成長するにつれー・・・」
「可愛い・・・?」
田村先輩はピシ・・・と固まった。タイミング良く、「おまたせしましたー!」と店員さん。
「こちらの物はどちらの・・」
「あっはい、僕です」
「あ、すみませんどうも!ではもう1つはお連れの方のほうにおきますね!」
「はいっありがとうございます!・・・先輩?」
黙っている先輩へ声をかけると、・・先輩は真っ赤になって口をおさえていた。
「っ田村先輩大丈夫ですか!?具合でも・・」
「何でもないっ…!早く食べて早く行くぞ!」