短編

□黒狼、白を得る
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絶望は白い色をしていると、黒い狼が囁いた。




黒い狼は絶望の中にいた。
暗く光の差さない世界は居心地が良かった。白は悲しみを思い出させる。あんなに愛した色だったのに。共に生きると誓った色だったのに。


全てを与えてくれた白は、どこにも見えなくなってしまった。 この胸に抱いた小さな白以外は。


小さな白は腕の中で眠る。絶望など何も知らない顔をして。小さな微かに動く身体と静かな息遣いを肌で感じる。


ああ、生きている。確かに白は生きている。


愛しい色を宿した命。自分と色を繋げる唯一の命。


白は生きた


そしてまた、生きるんだ




希望は白い色をしていると、黒い狼は微笑んだ。

 

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