perpetual-azure

□♯1 まだ見ぬ君への愛の詩
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暗いのが苦手なのはトラウマなんだと思う。
それでも何処かで、そこは自由な自分の時間で冒険に出られる時間でもあった。そんなわけで夜中から明け方と言う時間が好きだ。
白んでいく空を眺めながら濃いめのコーヒーとたまに推敲役のベックマンの煙草の煙の香りに包まれて。そうやってきた。だからここに来ても、吸えやしない煙草の煙が恋しくなって傍らにつけておく。そして完全に朝になるまで一晩中書き続ける。
ニュース•クーから新聞を受け取り原稿と、時にはああして届くか判らない自己満足の手紙も付け渡す。その足で市場に行ってちょっとした物を売って昼頃帰る。このシャボンディという土地は新世界への入り口のためか市場の活気も凄くて、珍しいものも結構あってたくさんの戦利品と共に帰るのだが帰ればシャクヤクさんが笑顔でご飯を作ってくれている。そんな毎日でこの日々に不満があるなど贅沢な我儘だと思う。現にシャクヤクさんはいつだって他の人が見たらがらくたのようなあたしの荷物を見ても興味を持って歓迎してくれるし、あたしの話もちゃんと聞いてくれる。何一つ幸せじゃないことなんかない。

それでもカレンダーを見ると心がざわめくのがはっきりと分かった。

2年と言うのは長いようで存外早くて、と言うのも自分の職業柄長編を幾つか書くのに籠るとひと月などあっという間で時折、他意もなく単純に驚くことがあった。
そう言っても今更いざ迫る“その日”を考えたらあまりにも現実的でないはず過ぎてまるで実感がなかった。
日常過ぎて、なんて贅沢なことは解っている。だからこうしていつも忘れないように毎朝、書くだけは書く。届かなくて当たり前。存在など知らなくて当たり前なんだ。だから手紙なんて読まれてなくて当然。きっと自分と同じような想いでその人に手紙を書いた人なんてごまんといただろう。だからあたしは何も特別ではない。世界中の皆と同じ伝説に恋する一人でしかない。
それを忘れない為に書いている。
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