デュラララ
□アザミ
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第2話 戸惑い
「はー疲れた。」
放課後、夏帆は屋上にいた。
ずっと笑いっぱなしというのも疲れるものだ。
彼女には楽しいと思って笑うことはなかなかないのだから余計に疲れることだろう。
バァァァンッ
「?」
下の方からすさまじい音がして夏帆は空を仰いでいた顔を下に向けた。
そこには....
何かを叫びながら普通の人間なら投げられないようなものを投げまくっているクラスメイトと
それを投げつけられているのにどうやらヘラヘラと笑っているらしい男の子がいた。
「喧嘩かなぁ?ここからじゃよく見えないや。」
夏帆は呑気にその様子をぼーっと眺め、
その異様な2人が何処かへ行ってしまったのを見届けてから
そろそろ帰るか、と身をひるがえした。
「くっそ、臨也のヤツ殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す....」
先ほど喧嘩(というか殺し合い)をしていた静雄は相手を取り逃がしたことにキレていた。
なので前から人が来ていることに気づかず....
「わっ!」
ぶつかってしまった。
「すまん。大丈夫か?」
我にかえった静雄には目の前の
「大丈夫」と答える少女に見覚えがあった。
「あ....あんた、転校生の....」
「五十里夏帆です。よろしく。」
ぶつかった相手_____夏帆はにこりと微笑むと静雄のお腹へと目を向けた。
「え、わたしがぶつかっただけでこんなに血が!?」
「いや、それくらいじゃでねーだろ。
ちょっとさっき刺されちっただけだ。心配ねー。」
「....いやいや、ちょっと刺されたっておかしすぎるでしょ。ちょっと来て。」
夏帆は静雄の手をガッとつかむと歩きだした。
「おい、どこいくんだよ!」
「保健室」
「は?何でだよ。」
「手当てに決まってるでじゃないかー。」
「必要ねぇ。ほっときゃすぐ治る。」
「例えそうだとしても見ちゃったんだからほっとけないでしょー。」
不思議なくらいのんびりと答える夏帆に静雄は戸惑いながらも少しの手の温もりに嫌な気はしなかった。
「しつれーします....と、先生はいないのか....
ではここに座って....えーと....何クン?」
「平和島静雄、だ。」
大人しく言われたところに座って静雄は答えた。
「平和島くんね、おっけー。覚えた。
ごめんね、ちょっと服上げるよ。
あら、ホントに傷の治りがはやいんだ。
消毒するね。ちょっと痛いかも。
あ、平気だった?
あとは、包帯、包帯....どこだー?
お、あったあった。」
ひとりでどんどん進めていく夏帆という今までに出会ったことのない存在に静雄は戸惑っていた。
「いやー凄いね、この高校。
さっき平和島くんが喧嘩してるとこみたよー。
それで怪我したんでしょ?刺されて。
平和島くんはいろんなもん投げてたし。
この高校何でもありなんだね。」
よし、できた。と微笑む夏帆に
静雄な戸惑いはさらに増した。
こいつは俺のあの姿をみてこの態度だったのか?
「えーと、終わったんだけど。
おーい。聞いてるー??」
顔を覗き込まれて静雄は我にかえった。
「あ、あぁ....さんきゅーな。」
「いえいえどーいたしまして!
っつても大したことしてないけど」
そう言ってまた微笑む彼女に
少し違和感をもって別れた。
「なに、あのこ。面白そう。」
そういってにやりと笑う彼には
誰も気がついていなかった。
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