黒子のバスケ
□好きなところ
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一目惚れだった。
「こんにちは、黒崎レイです!
先輩、好きです!」
「あーはいはい。もうわかったスよ」
もう日常と化してしまって誰の目にも留まらなくなったやりとり。
黒崎レイと学校一のモテ男の黄瀬涼太のやりとりである。
「先輩好きです。こっち向いてください!」
「そっち向いて何かいいことでもあるんスか」
「私が先輩の顔を見れます!」
はぁ
黄瀬はため息を漏らした。
黄瀬にはこの子が自分を好く理由が分からなかった。
この子は自分がモデルをやっていたことを知らなかったし、聞くところによると顔のタイプは笠松先輩であるらしい。
だから怖かった。
今までの女は皆自分のどこを好いているのかはっきり分かっていたからだ。
「黒崎さんさぁ」
「私の名前覚えてくれていたんですか!?感激です!」
毎日会いに来てまず名前から言うのに覚えない方が難しいというものだ。
「....何で俺のこと好きなんスか?」
レイの顔がパッと輝く。
「やっと聞いてくれましたね!
先輩もとうとう私に興味を....」
「ないから」
「ですよね....」
即答する黄瀬にふと見せる傷ついたような笑み。
たまに見せるその笑みに黄瀬はいつも心を痛める。
ちょっとひどすぎたっスかね....
そう思って謝ろうとしてもいつも既にその笑みはいつもの満面の笑みに変わっていた。
「私が先輩を好きになったのは一目惚れでした!」
え?だって、
「でもあんた顔のタイプは笠松先輩だって....」
「だって顔じゃないですもん!」
一目惚れなのに顔じゃない?
訝しげな顔をする黄瀬にレイは笑った。
「私が一目惚れしたのは先輩のバスケ姿です!」
姿?
「先輩よく青峰先輩と1対1でバスケしてるじゃないですか。青峰先輩強いですよね! 先輩はいつも負けるけど嬉しそうに楽しそうに青峰先輩先輩に挑んでて、その姿に一目惚れしたんです!!」
キラキラとした顔で語るレイに対してため息をつく黄瀬。
「負けた姿にって....なんかばかにされてる気分スね」
「這狽ヲっそんなつもりじゃ....」
焦り出すレイ。
でも、
「悪い気はしないっスね」
「え、何か言いましたか?」
「何でもないっスよ、レイちゃん」
お、紅くなった。
「せっ先輩!!私今日死ぬんでしょうか!?」
なぜそうなる。
でもそしたら少し寂しくなるかな。
少しっスけど。
いつか俺を惚れさせてくれるんスかね。
黄瀬は目の前で騒ぐ後輩を見ながら柄にもないことを考えていた。