グラジオラス
□序章
1ページ/1ページ
「本当にありがとうございました!
俺、先生たちにも君は悪くないって、俺を助けただけだって言ったのに全然聞いてくれなくて....」
何だ?
菅原が中庭を覗くと男子生徒が女子生徒に頭を下げていた。
「別に....道通りたかっただけなんで」
女子生徒がそう言うと男子生徒は顔を上げた。
「でも、入学して早々2週間も自宅謹慎になって....助けてもらっただけなのに...周りの人も誤解してる....」
自宅謹慎って....
菅原は1週間の自宅謹慎となった後輩を思い浮かべた。
「かまいません」
女子生徒はそう短く言ってその場を離れた。
パコパコ
足音をたてて歩く。
どうやら靴が少し大きいようだ。
何か可愛い足音。
菅原がくすっと笑うと女子生徒がちらっと菅原に目を向けた。
あ、やば。
菅原が曖昧に微笑むと女子生徒は直ぐにふいっと顔を背けて歩いていった。