グラジオラス

□合宿 1日目
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「鈴ちゃん、先に合宿所に行って晩ごはん作ろうか」


練習も終わりに近づいた頃、清水にそう言われ鈴は合宿所に向かった。





「鈴ちゃん左利きなんだね」

晩ごはんを作っていると清水がふと言った。


「元は右利きなんですけど....頑張りました」

鈴がそう答えると武田が「へぇー」と声をあげた。


「何でまた?」

「右手....というか右腕が上手く使えなくなってしまって」

鈴の淡々とした様子に「え?」と2人とも目を見張る。


「だから足手まといになるようだったらやめる、と言ったんです」


清水が黙りこむ。


「....鈴ちゃんがいて凄く助かってる。ありがとう」

清水が気遣ったわけでもなく、ただ本当に思っていることをそのまま言った言葉に鈴の無表情だった顔が少し緩まる。


「かわいい....」

清水が鈴の頭を優しく撫でる。


「....潔子さんって呼んでいいですか?」

鈴のいきなりの申し出に「?....いいけど」と戸惑いながら頷く清水。


鈴が清水になついた瞬間だった。






「潔子さん....」


晩御飯も終わって清水が帰ろうとすると鈴が小さく声をかけた。
その顔は心なしか寂しそうだ。

鈴の後ろでは田中と西谷が「潔子さぁぁぁん」と号泣している。


「ここに残していくの心配だけど....後は頼んだよ」

清水が鈴と向き合い頭を撫でる。
鈴が少し嬉しそうな表情になった。


「鈴が笑った!?」

「さすが潔子さん!」

「つーか絵面が素晴らしすぎる!!」

西谷、田中の順で交互に言い合う。


「おっ清水帰んのか?」

「お疲れ、送っていこうか?」

澤村と菅原が顔を出す。


「いい。じゃ、また明日」


清水はもう一度鈴の頭を撫でて帰っていった。


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