短めのお話
□満月の夜
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数秒見つめあった後、その男性はニコッと笑い話しかけて来た
「お一人ですかぁ?」
先ほどとは打って変わり人懐っこい声と愛嬌のある笑顔
見間違い…?
「え、はい、1人です」
「何でこんなリゾート地に1人で?」
私が何も言えず口ごもっていると
「…そっちに行っていいですか?」
え…?と彼の顔を見ると捨て犬のようなすがりつくような目をしていた
いつもなら軽くあしらって終わりなのだが
1人の淋しい夜が
彼のすがりつくような目が
私を変えてしまったみたい
「どうぞ…」
そう言うとパアッと明るい表情を浮かべて部屋の中へ戻っていく彼
私も釣られて部屋の中に入り、入り口の鍵を開ける
すぐにノックが聞こえてドアを開ける
「お酒好きですか?」
彼の手にはワインとシャンパンが握られていた
「少しだけ」
私はニッコリ笑うと部屋の中へ彼を入れた
ベランダの小さなテーブルにグラスとお酒と少しのつまみ
そのテーブルを挟むように2人は座って月を見上げていた
「…で、傷心旅行でここへ来たんですか」
お酒が入ったせいか少し話しすぎた
「そういうこと。そっちは何故1人でここへ?」
「あー、実は1人ではなくてグループなんです」
?
どういうこと?
「僕、韓国で音楽活動していて、グループでここへロケに来たんです。でも海が綺麗だったから僕だけ延泊して…」
なるほど
時々イントネーションがおかしかったのはそう言うことだったのね
ここら辺の訛りかと思ってた
「僕たちのこと知ってます?」
「…ごめん…」
「あー!いいですいいです!日本デビューしたの最近だし。…それに僕のことを知らない方が話しやすい」
…デビューして…間もない?
「ねぇ、君いくつなの?」
「ハタチになったばっかりです」
OMG…
かなり若い子だったのね
「えっと…年齢聞いてもいいですか?」
「ギリギリ20代…としか言えないわ…」
そうですか!同じですね!と笑う彼
確かに同じ20代だけど…全然違うわ!