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□不安
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やたらと広い校門をすり抜け、後ろから聞こえる予鈴を無視し駆け出した。
HRが終われば自由な時間を我が物に出来る。これは学生の特権だ。
と宣言した割には、毎日決まったルートをひた走る様子が見て取れた。

決まった道を曲がれば大きな通りを抜け、いくつかの路地を曲がる。

4区と呼ばれているその地区には暗がりが多く、女一人で歩くには気味の悪い場所だった。
ゴロツキも多いため、世に言う女の子たちは避けるような地区だ。

それももう慣れたもので、かれこれ数ヶ月同じルートを走り目的地へと向かっているが、彼女にとって危険なことは、幸運なのか何一つなかった。





僅かに乱れた息を整え扉の前に立つ。
その瞬間はいつも身を固くしてしまう。
昔の歌になんだかあったような、なんてことを頭の隅に浮かべながら深呼吸をする。
いざドアノブに手を掛けると、内側から扉が開いた。


「っつ、ぅ…!」


こちら側へと迫った扉を避けることもできず、額を打った。
額への鈍痛、重心を見失った体は、素直に地面へと預けられた。


「…あ。」


店から出てきたのは、この店の主。
黒い目玉、黒目の部分は赤。
頭の半分が刈り上げ。
異質な雰囲気を纏ったこの人物こそが、名無しの目的だった。

「また来たんだ。いらっしゃい。
…あと倒れるの好きだね、お店入れば」

うっすらと笑みを浮かべた顔は、昨日と何ら変わらずで。
タトゥーが走る肌が目立つ。
手をひかれ身を起こすと、促されるままに店内へと歩を進めた。
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