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□ばすろーぶ
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「お、おい三成…その着物は何だ…」
「殿?!」
「三成…?此度の戦はそういう流れ、なのか…?」
「………」
戦支度をするため席を離れた三成を待っていた面々。
だが支度を終わらせ現れた三成を見るや動揺が走る。
いつも騒がしい正則に至っては完全に固まっていた。

渋い顔をした三成がおもむろに口を開く。
「…秀吉様の命だ。背くわけにもいくまい。」
ギリッと歯を食いしばりながら「何故こんなことに」とでも言いたそうにしている。
三成の着物はいわゆるバスローブといわれるものであった。ちなみに足はスリッパである。
もこもことした素材がついていながらも薄い着物は、三成の華奢な体をより一層引き立てている。

「頭デッカチお、おまっ…いくら叔父貴の命だからって戦にこれはねぇだろ〜?!」
「俺は秀吉様の命には逆らわぬ!」
正気に戻った正則が止めようとするが、半ばやけになっているのか、赤くなった顔をプイッとそむけてしまった。

「しかし殿。似合ってるっちゃ似合ってますが、こりゃ危ないですよ…主に尻とかが(ボソッ」
左近は諌めるようとするが、視線は尻に行ったままである。
「そうだな…。それでなくてもピラピラして戦いにくそうだしな」
清正は足をガン見していた。
「なるほど、そういう流れか」
「ぅ、わっ!よよよ、吉継??何をするっ?」
吉継に至っては何をどう理解したのか三成の背後にまわりこみ、尻を撫るという行動にでる。
「ふむ、生地も尻もいい触り心地だ」
実に落ち着いた、堂々とした触り方に呆けていた正則が三成を引き寄せ、吉継を引っぺがした。
「コラ吉継ー!てめー俺の三成に何すんだ!!」
「誰がお前のなのだよ馬鹿!吉継、お前も変な事するな言うな!」
「ふっ…お熱いことだな」
吉継はしっかりがっしりと正則に抱え込まれている三成を見てふ、と笑いそのままどこかへ歩いて行った。

「ま、待て吉継…!」
「あーあ、見てられませんねぇ。俺もそろそろ失礼しますよん、ではこれで。」
「はぁ…ちょっと用事出来たから行ってくる」
吉継に続き左近と清正が去る。

「お前たち、何処へ行くというのだ!じきに戦が始まるのだぞ!?」
三成が声を上げるが、去った三人には届いていないようだ。
正則はハァ…とため息を付きながら三成から手を離した。
「ったく…こんな薄っぺらい着物で戦に出ろなんて、叔父貴も冗談きついぜ…」
「…秀吉様の悪口言うな」
「ただでさえお前弱っちいんだからよ、っていってェな!」
正則や清正や左近に比べ、弱いのは自覚しているし気にもしていた。
だが言葉にされると腹立たしいものである。
三成はとりあえず正則の脛を蹴っ飛ばした。
「まー聞けって!俺ァお前が怪我したら嫌なんだよ、大事だかんな!」
「正則…」
ニカッと笑顔の正則に照れて顔をそむけた三成だったが、ふと木陰で見慣れた兜を見た。


「…秀吉様?そこにいらっしゃるのですか?」
「叔父貴?」
三成と正則が声をかけると、何とも複雑そうな顔をした秀吉が現れた。
「あー、ああ、すまん。わしじゃ」
「こんな所まで、どうなさったのです?何かございましたか!?」
「あーいやいや、違うんじゃ。ちょいと悪ふざけがすぎたと思うてのう!」
「はあ…」
「その着物はばすろーぶっていうもんでな、風呂上がりに着るもんなんじゃ!ちょっとふざけてしもうたわ。すまなんだな、三成!」
「ふ、風呂上がりですか…」
風呂上がり時に着る着物。道理で色々と心もとないはずであると三成は感じた。

「叔父貴ぃ〜、いくらなんでも風呂上がりのカッコはまずいっす!ガチで!色んな意味で!」
「あぁ…そうじゃな…。三成、もうええで。いつものカッコに着替えてくれや」
「…はい、わかりました。失礼致します」
ペコリと一礼して着替えに向かう三成を眺めながら、秀吉は正則に耳打ちした。

「実はな、さっきわしんとこに吉継と清正と左近がやってきたんじゃ。
んでな、あの格好は色んな意味で味方も危ないからいつもの格好で参戦させるべきじゃゆうてな〜」
若干残念そうに語る秀吉。
「あいつら…チョ〜〜いい奴!!」
3人ともいなくなったのは秀吉に直談判するためだったのである。
「ま、そーゆうわけじゃ。すまんかったな!今回の戦はお前が三成の事守ったってくれや、正則!」
それだけ言うと、秀吉は後でな〜と手を振りながら戻って行った。

「おう!合点だぜ〜!」
こちらも秀吉が見えなくなるまで手を振り返す。
あの三人はもう各々の持ち場へ向かったようで、辺りを見回しても忙しなく行き来する兵しか見当たらない。


「…あ。俺もケツ触っとけばよかった…」
さきほどのばすろーぶ姿を思い出しながら独りごちる。
あの姿は色々と危険だ。鎖骨の辺りやらすらっと伸びた足などが特に。
戦が終わった後もっかい着て貰おうと心に決めながらもうじき仏頂面で現われるであろう三成を想像すると、自然と笑みがこぼれた。



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冗長だ!(ァ千代
書いてるうちになんか良く分からなくなってしまった汗
可愛い殿とカッコイイ正則を書きたいのですが…難しいw


 

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