太陽と月
□01.出会ったのは
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『みなさん、ほんっとにお世話になりました!』
船から降りてぺこりとお辞儀をする。
「島が見えた」発言から、気づいたら洗濯を干し終わっていたという感じでとにかくぼーっと、してしまった。途中船長さんが何か言ってたけど、正直何にも頭に入ってこなかった。そんなこと本人に言ったら怖いから言えないけど。
そして、気がついたときには島に着いていて、ハッとしたらみんなが船から降りていくのに気づきあわてて付いていった。
丸腰でこの船にトリップしてしまったあたしは船から持っていく荷物など当然ない訳で、服から始まり(大抵はシャチの服)色んな物を借りていてかなりお世話になってしまっていたことに気づかされた。
お辞儀から顔を上げて、みんなの顔を見ると何故だか微妙というか何とも言えない顔をしていて。
さっきから『みんなのことは忘れない』とか『楽しかったよ』とか言ってるのはあたしだけで、みんな「あぁ。」「そうか」としか言ってくれなかった。
正直、ベポやシャチ辺りは悲しんでくれるかなー、と思っていたけどその2人すらあんまり反応がなくて、ちょっぴり胸が痛かった。
‥ちょっぴりっていうのはあたしなりの強がりだ。
『‥‥じゃ、あ。あたし、そろそろ行きます、ね』
なんだかいろんな意味で泣きそうだったから、すぐこの場を離れようと思ったけど、「おい、」とそれまで黙っていた船長さんに声を掛けられ、嫌々振り返る。今泣きそうなのに。
「島のログがたまるまであと4日はかかる。だからそれまで俺たちもこの島にいるし、船も出港はしねぇ。」
『‥は、はぁ。そうですか』
今別れというのに
わざわざそれをあたしに言う船長さんに怪訝な顔をすれば、
「‥だからそれまで船に居たって構わねぇ」
そう言った船長さんの言葉にようやくわかった。
あぁ、船長さんはあたしが寂しいと思って言ってくれてるんだと。‥やっぱ優しいな。
『‥‥いえ、だいじょーぶです!そこまでお世話になるワケには行かないですし!約束も次の島に着くまででしたから』
これ以上お邪魔したら、寂しくて別れがきっとすごく嫌になると思うし。
『だから、大丈夫です』
と付け加えて笑ってお辞儀をした。さようなら、の意味も加えて。船長さんは「そうか。」と言い、その後は何にも言わなかった。
あたしはもう一度お礼を言ったあと、
ハート海賊のみなさんに背を向けて歩き始めた。
街に入り、建物と建物の間に入って、壁に背中を預けた。ふー、っと息を吐いたあたしの瞳から涙がこぼれた。
別れのとき、
ちゃんと笑えてたかな。
(もうあの愉快で優しい人達に、)
(会えないと思ったら、)
(涙が溢れ出した)