太陽と月
□01.出会ったのは
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『海賊なんて聞いてません!』
「まあ言ってないからな」
『なんで教えてくれなかったんですか!あたしずっと漁師さんだと思ってたのに!』
「そりゃ勘違いしてたてめえが悪い。俺は漁師だと言った覚えはねぇ。」
ごもっともな返事にぐ、と言葉を詰まらせる。現在、海賊だとたった今知ったあたしは、抗議中です。
「それでびっくりして気絶したのか」
と、くつくつ笑う船長さん。あぁ、よく考えれば船長って海賊の船長ってことだったのね。
だからみんなこの人のことを「キャプテン」と呼んでたのね。
『っていうか、あたしが勘違いしてたこと知ってたんですね!』
「まぁな。ずっと勝手な勘違いしているお前と話してるのは面白かったな。」
『くぅ‥!なんですかそのドヤ顔!』
ドヤ顔をしてくるこの人を誰か殴って下さい。自分でやれって?何をバカなことを!あたしが殴れる訳ないでしょ!だって怖いもん!
「俺たちが海賊だと知ってビビったか」
船長さんのその言葉に一瞬きょとんとする。
『‥いやー、確かにね海賊だと知った時は、海賊が本当に実在するのかと映画でも見てるんじゃないかとびっくりしちゃって気絶はしましたけど、別にビビった訳ではないですよー』
あたしの言葉に「は?」と返す船長さんを気にせず話し続ける。
『だって海賊だろうと漁師だろうと、船長さん達が船長さん達であることにはなんら変わりませんしねぇ。』
海賊だと知った今、別に彼らに対して何か見方が変わった訳でもないし、彼らは彼らだ。
最近、この船の人達は優しい人だと感じていた。それが海賊だから変わる訳でもなく、優しい彼らには変わりないのだ。
『だから、今さら海賊だからビビるってことはないですよ。』
あたしはビビリではないのだ!と今度はあたしがドヤ顔で言う。
『それにほんとは船長さんだって優しいんでしょー?こんな見ず知らずのあたしを船に置いてくれるなんて』
「‥‥やっぱてめぇアホだろ」
船長さんはそう言い、呆れたように笑ったが、その笑みは珍しく人をバカにするようなものではなかったことに驚いた。
海賊を優しいなんて
こいつは素直すぎるアホだと思った
("お分かり?"って言ってみて下さいよ!)
(あ?なんだそりゃ?)
(ジャックスパロウの口癖ですよ!知らないんですか?)
(誰だそりゃ)
海賊と言えば、パイレーツオブカリビアンを思い浮かべたひなたでした。