太陽と月

□01.出会ったのは
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「ひなた、お腹空いたでしょ。ご飯食べよ?食堂案内するから、着いて来て。」

『うん!ありがとう』

一通り船の掃除や洗濯物などを終えた頃にはすでに夕方になっていた。ついさっき唯一仲良くなったベポの後をついていく。


食堂に入ると、中は長細いテーブルがいくつかあり、それらを囲むように椅子が並べられてあり、学食と変わらない風景だった。


「ここが食堂だよ。ご飯とってくるからひなたはここに座って待っててね」

『わかった。ありがと!』


ベポにそう言われ大人しく座った後、キョロキョロと辺りを見渡す。

‥‥‥‥


‥‥‥‥


し、視線が痛いよう。

食堂に入ってきてから、なにかとあたしをチラチラと見てくるのは、ベポと同じツナギを着た人達。彼らはご飯を食べたり、話をしているものの、気になるのかこちらを見ている。

こんなにとジロジロ見られると落ち着かない。まあ、でもいきなり見たことない人がいたら、そりゃあ見るよね‥


早く戻ってきて!優しき熊さん!


願いが通じたのか、案外早く戻ってきてくれたベポは笑顔でお盆を持っていた。

「おまたせ、ひなた。これひなたのだから食べていいよ。緒に食べよ!」

『わ、美味しそう‥。ベポ!ありがとう!』


ベポがお盆に乗ったご飯を持って来てくれ、二人で「いただきます」と手を合わせた。


『そういえば、この船って女の人いないの?』

今だこの船に女の人を見かけず、食堂にも見当たらなかったのだ。そう疑問に思っていたことを聞くと、

「おー、この船には男だけだぞー」

返答は真正面に座るベポからではなく、上から聞こえ顔を上げると、シャチさんがお盆を持って立っていた。

『あ、シャチさん。』

「よっ、隣いいか?」


その問いに「もちろん」と返した。隣に座った彼は、シャチという名前で、最初にあたしを見てオバケだと叫んだあの人だ。
甲板を掃除している時に、彼はあたしをオバケ扱いしたことを必死に謝ってきた。そこまで気にはしてなかったのだけど。


『女の人いないんですね。』

まあ、でもそうだよね。女の漁師さんはあまりいないだろうし。

「おー。中々厳しいしな。ていうか敬語も、さん付けもしなくていいぜ。」

『わかった!じゃあシャチで!』

「適応、早いっ!」

『そう?じゃあたしもひなたでいいからね!』

「お、おう。じゃあひなたって呼ぶわ。」


あれから、ベポやシャチのおかげで周りの視線も気にならず、楽しく話しながら食べられた。

なんだ、ベポといいシャチといい、いい人(熊)もいるじゃないか。
うふふ、と微笑んでいたら、あたしの後ろに人影ができた。


「あ、ペンギンだ」

ほっとしたのもつかの間
氷点下オーラに背筋が立った


(おい、土下座女。船長が呼んでいる)
(ペンギンさん、あたしひなたっていう名前があるんですけど‥)
(なんか言ったか?土下座女)
(い、いえ!なんでもないですすいません!)
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