太陽と月
□01.出会ったのは
4ページ/14ページ
縄を解かれ、自由になったわたしの身体。ああ、自由だ。自由はなんて素晴らしいんだろう!
自由を堪能していたわたしはフードを引っ張られた。(あ、ちなみにわたしはパーカーを着ているの)ぐえ、苦しい。
恨めしそうにフードを引っ張った人を見るとさきほど、わたしに刀を向けていたあの男が立っていた。
その男は身長は高くスラリとしていて、よく見ると整った綺麗な顔立ちをしていた。俗にいうイケメンというやつ。でもそれ以上に、目の下にある、
『隈がとにかくすごい』
寝不足なのかな、よくこんな隈ができるよね、ちゃんと寝ないといけ『っいたい痛い!!』
何故か突然頭を鷲掴みされた。痛い潰れる!!
抵抗すると、「声に出てるんだよてめえ。」と凄まれた。
え、マジですか。そ、それはヤバイ気をつけないと。
「船に乗るにあたって忠告しておく。」
忠告って、なんかすごい大袈裟な気が‥
「俺たちに嘘をつくな。聞かれたことは素直に答えろよ。それと騙そうなんざ考えねぇことだな。妙な真似でもしてみろ、その首を即、はねることになる。」
『‥は、はい。もちろんしませんそんなこと考えてもません』
首を縦に勢いよくガクガクと振る。ぎゃ、首の骨が鳴った。
「それと次の島まで乗せてやるが、それまで約束通りお前には働いてもらう。指示はペンギン、お前にまかせる」
ペンギンと呼ばれた人ーPENGUINと書いてある帽子を目の下辺りまで被っている彼がどうやらペンギンと言うらしい。
「‥はい、わかりました船長」
ペンギンさんが頷いたのを確認した後、隈の男は奥の部屋へと入っていった。ていうかあの人この船の船長だったのね。
「‥お前、名前は?」
『あ、えっと、ひなたって言います。』
「そうか。俺はペンギンという。」
『あ、はい。ペンギンさんですね。よろしくお願いします。』
「じゃあさっそくだがお前にはまず甲板の掃除をしてもらう。」
なんだろう、この人はさっきの船長さんとはまた違った怖さを感じるのは気のせいかな。気のせいと思いた「聞いてるのか、土下座女」
名前を聞いた意味は?
さっき名前聞いたよね??土下座女って‥せめてもうちょっとマシなあだ名が良かったかな!なんて言えないキッチンなわたし。あ、間違えたチキンだった。
『はい!!もちろん聞いてます聞います!カンパンの掃除ですよね!!』
ん?カンパンってなんだろう。乾パンのことかな?あの地震とかの非常時に食べるあのパンみたいなことかな??ってことはキッチンに行けばいいのかな。
『キッチンってどこですか?』
「どうしてキッチンに行くことになった?」
あ、キッチンじゃなくて倉庫とかにあるのかな??
『そうですよね。なんでもないです。倉庫でしたね。倉庫の場所教えて下さい』
「俺は甲板の掃除をしろといったつもりだが?」
わ、わかりました!!いや、わかってないけど!!とにかくすいません!だから頭を鷲掴みしないで!!!
『す、すいません‥カンパンってなんですか?』
「船のデッキのことだ。お前が今いる場所のことだ。」
ああ、甲板ね!!!そっちのだったのね!甲板のことか!わかりましたわかりましたとブンブン縦に首をふる。だからそろそろ頭を鷲掴みするのをやめて!
「ペンギンあんまりいじめちゃかわいそうだよ。」
まるで天使のような言葉が聞こえた。その声を辿ると‥隈だった。
あ、間違えた熊だった。え、クマ???
『えっ、熊??!!しゃ、しゃべった!?』
思わず大声でそう叫ぶと、「熊ですいません」とうな垂れてしまった。
『いや謝らないで!むしろありがとう!優しい白熊さん!!』
「えっ、ううん。どういたしまして‥」
みんなと同じようにオレンジ色のつなぎを着たその白熊さんは、二本足で立ってしかもしゃべっている。なんと摩訶不思議。でも可愛い上に優しい言葉をくれたから白熊だろうがなんでもいいのだ。
「おれはベポ。ベポって呼んでいいよ。よろしくね、ひなた」
『うん!よろしくね。ベボ!』
「おい、ベポ。あまり馴れ合うな」
「なんで?大丈夫だよ、ペンギン。ひなたは悪い子に見えないよ」
なっ、なんていい子なの!!!こんな優しい熊初めてみたよ!!
「感動してる暇があったらさっさと掃除しろ。‥お前らも見てないでさっさと持ち場につけ」
『ぐえっ‥は、はぁい』
ベポに抱きつこうとしたわたしはフードを引っ張られ←(本日2回目!)ブラシを押し付けられた。そしてペンギンさんはさっきから遠巻きにこちらを見ていた仲間の人達を追い払うように手を振っていた。
雑用開始
がんばりますよっ
(それにしてもペンギンさんって実は陰のボスみたいな感じなのかな。怖いよう)
(なんか言ったか土下座女)
(ひっ!な、なにも!(地獄耳だ‥))