蝶のようにふわりと
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ーージャヤ東の海岸
「何やってんのよ、あいつらったらもう!!朝よ朝!!」
声を張り上げ、案の定怒るのは航海士であり兼、この船のある意味権力者であるナミ。
「約束の時間からもう46分オーバーしてる!!あたし名無しさんに時計まで渡したのよ!?」
「今思ったんだけどよ、アイツに時計持たせても、意味なかったんじゃねェのか?」
そんなナミに対し、ゾロがそんな事を言うと、ウソップが頷く。
「だよな、時計持ってること忘れてて、気づいて時間見た時には"やばいとっくに3時間過ぎてる!"って言ってそうだよな」
「あぁ、違いねェ」
その様子が容易に想像できてしまうナミはしまった、と頭を抱える。
「あぁ、名無しさんに期待したあたしがバカだった‥‥大体帰りは金塊持ってるから重くて遅くなるでしょ?そういう計算できてないのよあいつらの頭では‥!」
「いや‥鼻っから時間の計算なんてしてねェと思うぞ」
「あぁ、名無しさんちゃんは別としてあのクソゴムに関しては100%な」
名無しさんやルフィに関して言いたい放題のナミ、ウソップ。その言葉にサンジが名無しさんを擁護しつつも同意する。
このままでは突き上げる海流に乗り遅れ、空島へ行くチャンスを逃してしまう。
ーーどうしたものか、
焦る気持ちを押さえて静かに待ち始める一味。
そんな中、
『ぎゃあぁァァァァどいてどいて〜〜!!!』
「うわあぁぁぁぁーーー!!」
そんな大声と共に、ナミ達の近くを何かが目にも見えない速さで飛んでいった。あまりの風にナミやサンジの髪が揺れた。
ーーーガッシャーンッッ!!
何かが通り過ぎたと思ったら後ろの方で何かがぶつかる大きな音が立ち、一味やクリケットはハッとしたように後ろを振り返りその音の元を辿る。
「‥なんだなんだ、今の音は‥?」
「敵か!?」
警戒するように構えるサンジやゾロ。見ると、飛んできた何かは瓦礫に突っ込んだらしく、モクモクと砂煙が立っている。
「な、なんなのよ一体‥」
しばらくすると、煙から人影らしきものが見え始める。何者だと一味は目を凝らす。
『うへー、びっくりしたぁ』
「あっはっはっはっ!なんだこれお前ほんとおもしれェな」
そんな聞き覚えのある声が聞こえたと思ったら、瓦礫から麦わら帽子を被った男と、桃色の髪をした少女が出てきた。
「しっしっし、これ俺じゃなかったら死んでるぞ。俺ゴムだから平気だったけどな」
『だから安全は保証できないって言ったでしょ?まぁ結果大丈夫そうで良かったけど』
「「ルフィ!!名無しさん!!」」
立ち上がってそう話すのは、紛れもなく待っていたルフィと、名無しさんであり、その名を呼ぶ一味。
「あ、ナミ達だ。おぉすげぇ速さでほんとに着いた」
『でしょ?まあ着いたから結果オーライってことで!』
こちらを見るゾロ達に気づいたルフィと名無しさんは
「おーい!」と手を降り走って向かってくる。
「おーいって‥あんたらどんな登場の仕方よ!!もっと普通に帰ってきなさいよ!」
「お前ら物凄い勢いで突っ込んできたけど、どうやって戻ってきたんだよ?」
「んあ?あぁ、名無しさんの能力だ!こいつすんげーだよ!」
『いやいや褒めても何も出ないぜ親分!そんな事よりメリーちゃんどうしちゃったの!?』
瞳をキラキラさせる名無しさんの先には、羊からニワトリへと変貌を遂げたメリー号。メリー号の横部分に板でつくられた羽が取り付けられており、メリーの顔はトサカが装飾されている。
そんなメリー号を目にしたルフィも同様に瞳を輝かせる。
「うおっ!すっげーーなっ!」
「ゴーイングメリー号、フライングモデルだ!」
「『飛べそ〜!!』」
ウソップの言葉によりいっそう瞳を輝かせる2人が叫ぶ。
ウソップは船の改造を手伝ってくれたのはマシラと仲間達だと言い、2人はお礼を言う。
一方でナミが変身したメリー号みながらポツリと言う。
「あたしあれ見ると不安になる訳よ」
「まぁそうだな。ニワトリより鳩の方がまだ飛べそうだな」
「それ以前の問題でしょ!バカね!」
ーー
出港の準備をし、船に乗り込む。あとはルフィが来るのを待つだけだ。ルフィは座るクリケットの前に金塊を置き、マシラとショウジョウ達にお礼を言う。
ルフィが乗り込み出港の準備が整ったとき。それまで黙っていたクリケットが声を張り上げた。
「猿山連合軍!!ヘマやらかすんじゃねェぞ!!例え何が起きようと、そいつらの為に全力を尽くせ!!!」
「「「ウォォォォォ!!!」」」
それぞれの船に乗り先導してくれるマシラ、ショウジョウ達に伝えたクリケットは陸からルフィ達に声をかける。
「黄金郷も空島も、過去誰一人無いと証明できた奴ァいねェ!!馬鹿げた理屈だと人は笑うだろうが結構じゃねェか!それでこそロマンだ!!」
「ロマンか!!」
その言葉を聞いてにっ、と笑みを浮かべたルフィ達。
「小僧、嬢ちゃん、金を…ありがとうよ……!!おめェら空から落ちてくんじゃねェぞ!!」
そう言って微笑んだクリケットにルフィと名無しさんも頷いて笑顔を返す。船が陸から離れ始め一味はクリケットに手を振る。
「ししし、じゃあなおっさん!!」
『おじさんみたいな人に出会えてよかったよ!!』
「いろいろありがとクリケットさん!!」
「おやっさーん黄金郷はきっとあるぜ!!」
「おっさん無茶すんなよ!!!」
「余計なお世話だァ!!」
目指すは"空島"。ロマンを求め一味は空島へと向かったのであった。