蝶のようにふわりと
□6.
1ページ/5ページ
「おう真っ暗だ」
「おい、引っ張んなてめェ。」
「そんなこと言ってもよォ、勝手に手が‥」
辺りは真っ暗。当然森の中に明かりがあるはずもなく、暗闇に包まれている。
木々や植物が生い茂けて、ジャングルみたいな場所。真っ暗のジャングルというのは怖さをそそる。ウソップはサンジにしがみついて歩く。
『ウソップ、男のくせに怖がってるの?情けないなぁ』
「うるせぇ!!黙れそこ!つうか女のてめぇが平気な顔して歩いてる方が俺には不思議だわ!!」
そんな様子をケラケラ笑う名無しさんにウソップは怒鳴る。
「名無しさんちゃんは怖いものとかあるのかい?」
『怖いもの?うーん、まぁオバケとかはあたしも苦手かなあ』
サンジにそう聞かれ、うーん、と考える素振りをした名無しさんは答える。その答えにだらしない顔をするサンジ。
「オバケを怖がる名無しさんちゃん‥かっわいいな〜。その時は俺が全力で守るぜ!!」
『おー、頼りになる、ありがと!』
「名無しさん、騙されるなー、こいつ下心満載だから、いでっ!」
そう言ったウソップをサンジがゲシッと蹴飛ばしたのであった。
ーーなぜ、こんな真夜中に真っ暗の森の中に一味と名無しさんがいるのか。
それは、数分前に遡る。
南の森へ行けと突然言い出したクリケットは説明をはじめる。
「今から南の森へ行け!“この鳥”を今すぐ捕まえて来るんだ!」
この鳥とは、黄金でできた鳥。サウスバードを指している。
なんでこの鳥を?と疑問を浮かべるルフィ達にクリケットは続ける。
「お前らが明日向かう、突き上げる海流、ノックアップストリームはこの岬から真っすぐ南に位置している。そこへどうやって行く?」
その言葉にあっ、と気づいたようにナミが言う。
「そうか…目指す対象が“島”じゃなくて“海”だから頼る指針がないんだわ!じゃあ一体どうすれば真っすぐ南へ進めるの?」
「その為に“鳥の習性”を利用する!!ある種の動物は体内に正確な磁石を持ち、それによって己の位置を知るという。サウスバードはその最たるものだ。どんなに広大な土地や海に放り出されようともその体に正確な方角を示し続ける。とにかく!!この鳥がいなきゃ何も始まらねェ!!“空島”どころかそこへ行くチャンスに立ち合う事もできんぞ」
目指す場所は島ではなく、海だからこそ、正確な方向を知るためにサウスバードが必要である。
つまりはこのサウスバードがいなければ空島へ行くための手段のノックアップストリームすら辿りつけない。
「いいな、夜明けまでにサウスバードを一羽、必ず捕まえて来い!!」
空島に行けないかもしれないと知った一味は驚き、何で今さらそんな事と文句を言う一味をスルーし、クリケットそう叫んだのであった。