蝶のようにふわりと

□5.
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飛び込んてきたのは、サルみたいな男ーーマシラと、オランウータンみたいな男ーーショウジョウであり、どちらも航海中に出くわした男達であった。


おやっさんに何をしたのかと問い詰められるが、倒れたから看病していた事を伝えると「おめぇらいいやつらだな〜!」と感動し始める2人。


誤解を解いた事で仲良く話すルフィ達。楽しそうに話していたら
倒れていた男が目を覚ました。


「ひし形のおっさん!!聞きてェことがあんだよ。」

ベットの上に体を起こした男、モンブランクリケットにルフィがそう話す。


「迷惑かけたな。おめェらをいつもの金塊狙いのアホ共だと思った。それで、聞きてぇことって何だ?」
「おっさん!空島に行きてェんだ!!行き方を教えてくれ!」
「空島?」

空島という言葉に反応したクリケットは、少しの沈黙の後「お前らは空島を信じてるのか!?」と盛大に笑い出す。


『な、ナミ落ち着いてって』
「そーだぞナミ!相手は病人だ!」

そんな男をナミが殴りかかろうとしたため、慌てて名無しさんとウソップが宥める。


「空島はねェのか!?」
「さァな……あると言っていた奴を一人知ってるが、そいつは世間じゃ伝説的な大嘘つき。その一族は永遠の笑い者だ。」

クリケットによると、絵本に描かれていたウソつきノーランドという人物は彼の子孫である。モンブラン家は当時国を追われ肩身せまく暮らすも、人の罵倒は今もなお続いているのだが一族の誰一人奴を憎んでいないという。なぜなら
ノーランドが類まれなる正直者だったから。


その話を聞いたウソップがモンブラン家の汚名返上の為に海底の黄金都市を探してるのかと尋ねると、クリケットは怒り銃をウソップの頭上を発砲する。


モンブラン家の血を引いてるってだけで見ず知らずの他人から罵声をあびる子どもの気持ちがお前らにわかるかと、そう怒鳴る彼に一味は黙る。そして、少しして冷静になったクリケットは再び口を開く。


「あるのならそれもよし…ねェならそれもよし…。別に黄金を見つけて奴の無実を証明したいわけじゃねェ。おれの人生を狂わせた男との、これは決闘なのさ。おれがくたばる前に、白黒はっきりさせてぇんだ!!」

ーーそれこそがクリケットが海を潜り続ける理由であったのだった。

ウソップがその話を聞き、まさに"男"だと感動している横で、意外にも黙って話を聞いていたルフィが口を開く。


「だから‥‥!おれは空島に行きてェんだよおっさん!!!」 


そう言ったルフィの顔はいつになく真剣で、本当に空島に冒険したいという強い思いが伝わってくる。

「せっかちな奴だ。だから話してやったろ。空島の証言者はその“うそつきノーランド”。こいつに関わりゃおめェらも俺と同じ笑い者だ。」
「え、そいつ空島にも行った事あんのか!?」 
「残念ながら行ったとは書いてねぇが‥」


そう言って、クリケットは、本棚から航海日誌を取り出しページをめくり始める。


「航海日誌?まさか、ノーランド本人の?」
「そうさ‥‥その辺を読んでみろ」
「うわっ」


クリケットに航海日誌を投げられて、ナミは慌てて受け取る。近くにいた名無しさんがナミの隣りで日誌を除き込む。


「すごい‥400年前の日誌なんて」
『うん、歴史を感じるね‥』


ナミは開いてあったページを読み始める。


「海円歴1120年。6月21日快晴、陽気な町ヴィラを出港。記録指針に従い港よりまっすぐ東北東へ進航中の筈である。日中出会った物売り船から珍しい品を手に入れた。“ウェイバー”というスキーの様な一人乗りの船である…。」


その内容に、わぁ、と興味が湧いてきたルフィ、ウソップ、チョッパーも2人の元に近づいてきて航海日誌を覗き込み始める。


「無風の日でも自ら風を生み走る不思議な船だ。コツがいるらしく私には乗りこなせなかった。目下船員達の格好の遊びものになっている。…うそっ!何これ欲しい!」

『「「いいから先読めよ!!」」』

ナミが嬉しそうに話を挟むと、除き込んでいた4人が早く続きを読めと突っ込む。

その様子を「はいはい、」と軽くあしらったナミは再び読み始める。

「この動力は空島に限る産物らしく、空にはそんな特有の品が多く存在すると聞く。空島といえば探検家仲間から生きた空魚を見せて貰った事がある。奇妙な魚だと驚いたものだ。我らの船にとっては未だ知らぬ領域だが船乗りとしてはいつか空の海へも行ってみたいものだ。ーーモンブラン・ノーランド」


空島はあると示されており、さらに空島特有の産物があると言った内容は一味の気持ちを高ぶらせるには十分すぎるものであった。


「空の海だって!!」
「ロビンが言ってた通りだ!」
『すごいすごいよ!本当にあったんだ!!』


キラキラと瞳を輝かせてルフィ達と顔を見合わせる名無しさん。そんな様子を見たチョッパーが聞く。

「名無しさんも空島行く気になったのか!?」
『うんっ!あたし空島に行ってみたくなった!!あたしも連れてってルフィ!』
「もちろんそのつもりだ!名無しさん、一緒に冒険しようぜ!」

ルフィは名無しさんの肩を組み、しししとそれは嬉しそうに満面の笑みを浮かべる。それに対し名無しさんもルフィの肩に腕を回し満面の笑顔を返した。


「空島へ行くぞー!!」『おー!』と騒ぐ2人に一味も笑顔を浮かべた。


そんな一味の騒ぐ声を背に感じながら、クリケットは外へ出て海の近くに立っていたマシラと、ショウジョウに話しかける。


「お前らあいつらが好きか?あいつらどうしても空島へ行きてェらしい。」
「空島って‥行くとしたら方法は一つ。あいつらだけじゃ即死だぜ」
「だからだよ。俺たちが一丁、手を貸してやらねぇか?」


クリケットは自分を助けてくれた事はもちろんだが、何より彼らは空島はあると、冒険したいという真っ直ぐで純粋な思いを持っている。そんな彼らに惹かれたため、手助けしたいと思ったのであった。
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