黒バス中編・短編集

□どれだけ心配したと思ってるの
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大変、大変よ。








「事件だわ……」









「おや、どうしたんだい、玲央」









前から征ちゃんが歩いてきた。私は藁にも縋る思いで征ちゃんに駆け寄る。








ああ、そうよ、征ちゃんなら知っているかもしれないわ。








「あああ、征ちゃん……どうしましょう」






「落ち着け。何があったんだ」
























「志摩がいなくなったの……!」



















「……またか」





「見てないかしら!?」





「残念ながら、見ていないな」







ふう、とため息をつく我らがキャプテン。





征ちゃんも見ていないなんて……縋っていた藁が一瞬にして灰になったような感覚だわ。






「どうしましょう……、心配だわ、電話にも出ないし……」



「玲央」



「え?」



「いなくなったのはどれくらい前だ?」




























「ええと、5分くらい前かしら」



























          ・・・
「…………やっぱり、またか」



なんだか冷たい目を向けられてる気がする。私そんな変なこと言ったかしら?





「伊勢さんがいないと騒ぐには早すぎるんじゃないか」





「そんなことないわっ! ああ、もう、どこで何してるのかしら…………」





何度も何度もケータイを取り出しては返信が来ていないか確認するけれど、何も変化がない。




探しに行きたいけれど、入れ違いになるのが最悪だから迂闊に動けないし……。




ああ、もう。本当にどこ行っちゃったのかしら……。





















「まさか、誘拐とか……」


「こんな昼休みに学内で誘拐など、全くもって現実味がない。バカか」


















征ちゃんはそういうけど可能性は0じゃないわ!


こうなったら入れ違い覚悟で探しに、












「おーい、玲央ちゃーん」






「志摩!!!?」



バカ、私の、バカ。征ちゃんの言う通りバカ。入れ違いになるところだったわ。







「見て見てー、今日の購買すっごいジュースが、」







「志摩」






「え? なあに?」





「どこに行ってたの?」



「え、だから、購買に……」



「よ、か、った〜…………」




一気に全身の力が抜けて、倒れこみそうになった。慌てて私を支えようとしてくれる志摩は本当に優しい子ね。






「……はあ、まあ、見つかったのなら何よりだ」






今日一番の大きなため息をついて征ちゃんは去って行った。









私は気にせず志摩の手を握る。






「志摩、私から離れる時はちゃんとどこへ、何をしに行くか正確に言ってね」


「ええ!? いいけど……。でも、玲央ちゃん鬱陶しくない?」



「そんなことないわ! もう……」








どれだけ心配したと思ってるの
いつでも私はあなたしか考えられない


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