黒バス中編・短編集

□いい加減くっつけ
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……誰か、助けていただきたい。



「お、お、おはよう!」




「おう、おっはよー!」






左右に男女一人ずつ。俺を挟んで挨拶を交わす。





片方にいる常にニヤニヤしている男は、同じクラスで同じバスケ部の高尾和成。



もう一方にいる緊張した面持ちの女子は、同じクラスの伊勢志摩。





俺は、この二人の、互いに知らない秘密を両方握っている。







「(み、緑間くん!緑間くん!)」



「なんだ」





高尾に聞こえないような声で、伊勢が俺に囁く。



……ああ、始まってしまったのだよ。





「(どうすればいい!?高尾くんに挨拶はできたし、一歩前進なんだけど、あの、ここから先は……)」




「知らん」




「(みーどーりーまーくーんー!!)」





わたわたと焦る伊勢。



まずはこの伊勢の秘密。こいつはこの高尾に恋心を抱いているらしい。



……こんな男のどこがいいのか、いまいちわからないのだが。女子とは難しいのだよ。




「ちょっとちょっとー、俺抜きで何喋ってんのー?寂しいじゃんー」


「あ、ご、ごめんね!!」


「いーのいーの!気にしてねーし!」



うはは、と朝なのにでかい声で笑う高尾。俺は反対側で真っ赤な顔になっている伊勢に気付かないフリを決めた。











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そうこうしているうちに教室に到着。


伊勢は教室に着くや否や、「それじゃあまた」と言って仲の良い友人のところへ去っていった。


するとその瞬間、俺の前の席が陣地である高尾が後ろを向いてきた。



「で。」


「で、とは何なのだよ」


「とぼっけんなよ!」



さっきまでのニヤニヤした顔からは想像もつかないような焦った表情。

……今度はこっちか。




「なあなあ真ちゃん!志摩ちゃんと何喋ってたんだよ!?」



「……覚えてないな」



「もー!!つっかえねー!」




「気にしてないのではなかったのか」



「だって志摩ちゃんの前で「うん、気になるー」とか言ったらかっこわりーじゃん!」





ああああ、と唸りながら突っ伏する高尾。



高尾和成。絶賛伊勢志摩に思いを寄せている。



こいつが日常で取り乱すのはほとんど伊勢絡みだ。






「あー……でも可愛いなー志摩……。うわ、呼び捨てにしちゃった。どうしよう真ちゃん」





「……本人がいないのだから自由だと思うが」




「ちげーの!そういうことじゃねーの!」





ではどういうことだ。





ともあれ、見事に両片思いという大変迷惑な状況なのだよ。(そして両方とも何故相談を俺にしてくる)



この中で、俺は声を大にして言いたい。





いい加減くっつけ
そして俺を解放しろ



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