妄想録 (番外編)
□妬いてしまうの
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「んー………」
今度は私から抱きついてみる。新品っぽい服のにおいが私の鼻腔をくすぐった。
「みことっち…?」
「ごめんね、ちょっとだけ、だよ……」
妬いちゃったんだなー、私。
他の人がこんなにカッコいい涼太くんを見るってことに。
こんな醜い独占欲で涼太くんを困らせたくなくて、無言になる。
「おーい神那木さーん」
「!?」
遠くから人が呼ぶ声。
よかった……!!反射的に離れて…!!
「ど、どうしたの?」
呼んでいたのは同じクラスの女の子。
あ、そういえば彼女も写真部だったような…
「あれ、黄瀬くんだ。ちょうどいいや。写真部の題、『お嬢様と執事』に変えたから。神那木さん、お嬢様の役やってくんない?」
………え?
「それって俺とツーショットッスか…?」
「もっちろーん!!」
「いよっしゃあああ!!!!!!」
力強く拳を握ってガッツポーズする涼太くん。
そんなに喜ばれたら……
「わかった、やる…!」
「あっりがとー!!じゃ、衣装用意するから」
そう言って彼女は走って行った。
私も参加するのか―、と内心不安に思っていると、涼太くんがこちらを見てニヤリと笑った。
「みことっち、さっきまで嫉妬してたでしょ?」
「んぇ!?」
な、何故わかった…!!
「本当隠し事がヘタなんスから…」
「うー、ごめんなさい……いたっ」
ピコン、とデコピンされた。
あれ、でも、いたくない……
「妬いてくれて嬉しいッスよー?俺は。愛されてるって感じがして」
「そ、う…?」
「みことっちは俺に妬いてもらうと嬉しいッスか?」
あ、確かに嬉しい。
1人で納得していると、涼太くんが私の手をとって跪いた。まるで、本物の執事さんみたいに。
「お嬢様。この黄瀬涼太、一生お嬢様の恋人であることを誓います。お嬢様も俺に愛されてくださいッス…ね?」
ニコッと笑う涼太くん。
ああ、もう。カッコいい。
そう思いながら、私は目の前の執事に思いっきり抱きついた。
END