妄想録 (番外編)

□妬いてしまうの
3ページ/3ページ




「んー………」





今度は私から抱きついてみる。新品っぽい服のにおいが私の鼻腔をくすぐった。





「みことっち…?」


「ごめんね、ちょっとだけ、だよ……」





妬いちゃったんだなー、私。









他の人がこんなにカッコいい涼太くんを見るってことに。



こんな醜い独占欲で涼太くんを困らせたくなくて、無言になる。













「おーい神那木さーん」













「!?」



遠くから人が呼ぶ声。

よかった……!!反射的に離れて…!!



「ど、どうしたの?」




呼んでいたのは同じクラスの女の子。
あ、そういえば彼女も写真部だったような…




「あれ、黄瀬くんだ。ちょうどいいや。写真部の題、『お嬢様と執事』に変えたから。神那木さん、お嬢様の役やってくんない?」





………え?






「それって俺とツーショットッスか…?」

「もっちろーん!!」


「いよっしゃあああ!!!!!!」



力強く拳を握ってガッツポーズする涼太くん。
そんなに喜ばれたら……



「わかった、やる…!」


「あっりがとー!!じゃ、衣装用意するから」



そう言って彼女は走って行った。


私も参加するのか―、と内心不安に思っていると、涼太くんがこちらを見てニヤリと笑った。




「みことっち、さっきまで嫉妬してたでしょ?」





「んぇ!?」




な、何故わかった…!!





「本当隠し事がヘタなんスから…」


「うー、ごめんなさい……いたっ」



ピコン、とデコピンされた。
あれ、でも、いたくない……


「妬いてくれて嬉しいッスよー?俺は。愛されてるって感じがして」

「そ、う…?」

「みことっちは俺に妬いてもらうと嬉しいッスか?」



あ、確かに嬉しい。


1人で納得していると、涼太くんが私の手をとって跪いた。まるで、本物の執事さんみたいに。




「お嬢様。この黄瀬涼太、一生お嬢様の恋人であることを誓います。お嬢様も俺に愛されてくださいッス…ね?」



ニコッと笑う涼太くん。





ああ、もう。カッコいい。




そう思いながら、私は目の前の執事に思いっきり抱きついた。










END
前へ

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ