妖精の友

□フェアリーテイル
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「ここがあたし達のギルドがある街、マグノリアよ!!」

森を抜けた私の眼前に、港街が広がっていた。
さっきまで木々の匂いや、川のせせらぎの静かな音に囲まれていた。
しかし、今私の鼻を通り抜ける匂いは潮の香り。
耳に入ってくるのはさざ波の音やカモメの鳴き声、そして活気のある人達の会話。
肩に乗っていたアクアは、目の前に海が広がっていることにはしゃぎ、興奮しながら繰り返し海だよ、海だよ!!と叫んでいる。

「もしかして、サクラさんは海を見るのは初めてですか?」

ウェンディの問いかけに、私はコクリとうなずいた。
アクアに会う為に、家の裏にある大きな湖や川などには行ったことがある。
だけど、海を見るのはこれが初めてだった。
それに、ここの街の人達がすれ違いながら声をかけ合い、雑談を始める光景があちこちで見られる。
私達の街でも出会い頭に挨拶やおしゃべりはするけれども、こんな風に家族のような話し方ではなく、ご近所のお付き合いの延長みたいなもの。

「素敵な街だね」

心からの素直な感想。
それを聞いて誇らしげに笑うルーシィ達。

「街の中は、また時間を作ってゆっくり案内してあげる。
それじゃ、あたし達のギルドへ案内するね」

「うん、お願いします。アクア〜!!行くよ」

はしゃいでいるアクアに声をかけて、ルーシィ達についていった。
ギルドへ向かう途中、街の人達がルーシィやウェンディに声をかける姿を何度も見かけた。
この間はありがとうとか、またケーキ買いに来いよとか、マスターによろしくとか…
なんだか私が想像していた魔導士のイメージとは違う気がする。
もう少し、影があってこそこそ隠れて色々とやっていると思っていた。

「良い街だね、アクア」

「うん!!私がこの街の方角に惹かれたのも納得できるわ」

アクアは森を抜けてこのマグノリアへ私を連れて来ようとしていた。
水の妖精だからこの海に惹かれたのかもしれない。
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