問題児と自由な人

□こ、此処どこ
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秋霖が過ぎ去り、季節は
紅葉前線に差しかかる。


葉の色彩が褪せぬ間に見に行こうとあの自由な兄を説得し

自室で着物を着こみ、
準備を進めていた


春日部 耀

のもとに走りこむ三毛猫がいた

『た、大変や耀のお嬢ちゃん!
空からお嬢に宛てた手紙が!』

「……空から?」


三毛猫は耀の肩に飛び乗るように
手紙を押し付ける。


『勘違いしないでくだせえお嬢!
ワシは一言も嘘は言っとりません
本当に御天道様からヒラヒラと
降ってきたんや!』


言い訳のように言葉を重ねる
三毛猫の頭を軽く撫でてやり、
猫を持ち上げて微笑んだ。



「信じてる。嘘じゃない」


幼くも端正な笑顔で返す
三毛猫は落ち着きを取り戻したのか、今度は封書の中身が気になって仕方ないと、
瞳を爛々と輝かせ始めた。


『お嬢、早く開けて下せえ。
好奇心の余りストレスで
禿げちまう』


「うん、帰って来たらね」


耀は封書と三毛猫を一度置き、
着物を着る作業に戻る。


しかし好奇心旺盛な猫には
それが我慢ならなかった。

もう一度爪を立ててよじ登ると、

『おーじょーうー!
早く読んでおくんなせえ!

こんな着物なんて後にして

ーーーーーーーー』







ビリッ。 嫌な音。


恐る恐る袖の下に目をやると、
着物の脇から足先まで
醜く裂けていた。






そして、そこへ





コンコン

ドアのノック





「耀、入るぞ」
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