短夢
□河上万斉/甘々
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「はあ……」
窓側の席。放課後特有の雰囲気が漂っているそこで名無しさんは一人、頬杖をつき深い溜め息をついた。
最初の文から察し取れる通り、彼女には今、悩み事が有るのだ。女の子ならではの悩み事。きっと女の子なら誰でも思うかもしれない。分かってる!分かってるけど悩んじゃうの!そんな悩みだ。
とまあ前置きは終わりにして、本題に入ろう。彼女には付き合って約三ヶ月位だろうか。河上万斉と言う彼氏がいる__のだが、彼、河上万斉は。
「……まだ私とキスもしたこと無いんだよね」
そう、三ヶ月も交際をしているにも関わらず、彼は名無しさんにまだ手を出していない。彼女の悩みとはその事だった。
__いや、別にいかがわしい事をしてほしいとか、そんなんじゃ無いからね?
__ただ、デートとか、恋人繋ぎとか、キスとか、挙げ句の果てにはあはーんとか……憧れてる訳ですよ。あ、いかがわしいこと期待してた。
名無しさんは心の中でそう呟いた。それに彼は、名無しさんとは必要以上に喋ることもなければ、必要以上に会いもしない。
「……ってこんなの恋人以前に友達以下じゃねえかァアアアアアッ!!」
ァアアアアア
ァアアアア
ァアアア(エコー)
ばんっと机を力一杯叩き、名無しさんはシャウトする。名無しさんは放課後で良かったと、理性が戻った頃に安堵した。
「ふぅ……ったく。あっちから告白してきたのにさ。酷いよね」
机に寝そべり、グチグチと文句を言い始める名無しさん。一度甘い言葉が出ると止まらない、と同様に彼女の愚痴も出ると止まらない。
今の彼女から出る言葉は万斉への暴言だけだった。