-White Snow-

□9.今できること。
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暗い闇の中で、ましろは並盛中学校を思い浮かべた。

そしてすぐに見つからないような、静かな場所に意識が出られるように。





風の吹く音と爆発音に閉じていた目を開ければ見覚えのある校舎裏。

精神の離脱にまた成功して喜びながら、守護者を探して歩き出す。

一応、解毒の方法は隠れていた時に聞いたのでわかっている。

各場所にあるポールの上に乗った指輪を使えばいいということ。

一番始めに見つけたのは雲の守護者…雲雀の姿だった。


「…ひばり!」

「どうして…君が、いるわけ…」

「ましろはファミリーだもん。」

「…理由に…なってないよ…」


ましろは幻覚で小鳥を作り出して指輪を手に入れる。

それを持って雲雀の近くにしゃがむ。


「んと…どうやったらいいのかな…?」

「かしな、よ…」


雲雀は指輪を受け取ると、腕輪の窪みに差し込んで解毒した。

それを見てましろはなるほどと小さく頷く。

少しして楽になったのかすぐに立ち上がって動き出す雲雀。


「ひばりっ…」

「校内で死なれたら困るからね…。始末が面倒なんだ。」

「ましろも行く!」

「…勝手にすれば。」


若干ふらつく雲雀を心配しながらましろは少し後ろを追って歩く。

万が一見つかりそうになってもすぐに姿を消せるように意識を集中しながら。






ゆっくり歩くこと数分…いざこざがあったものの、今度は雨の守護者である山本を発見した。

ましろは無理をしそうな雲雀をなんとか言いくるめ、代わりに指輪を取ってきて解毒を試みる。

腕輪から小さな音がして薬が注入されたことを確認すると一安心。

苦しそうだった山本も、いつものような笑顔を取り戻しつつある。


「…サンキュー、二人とも。助かったぜ。」

「ううん!元気になって良かった!」

「僕は行くよ。まだ、片付けが終わってない…」

「待てよ雲雀。フラフラじゃねーか。」

「…何のこと。」

「休んでろよ。こっからは選手交代だ。」

「………。」


元気に駆けていく山本の後ろ姿を見送って、ましろも負けてられないとやる気を上げる。

雲雀は少し休む様子なので一人で他の守護者を探そうと踏み出した時。


「…待ちなよ。」

「どうしたの?ひばり。」

「さっきの質問。」

「ましろがここにいること?」

「僕の記憶が確かなら、君は出られないはずだけど。」

「ましろは今、精神だけなの!身体はあっちにあるよ!」

「へぇ…。あいつみたいなこと、できるんだ…?」

「あいつ…?」

「君はもう、戻りなよ。後は僕の仕事だよ。」

「でも、まだみんな…」


ましろは言いかけて止めた。

無言で視線を送る雲雀の強い意思が感じられて。

これ以上の助力は逆に迷惑となってしまうと理解して苦笑する。


「君のそういうところ、嫌いじゃないよ。」


雲雀はくしゃりとましろの頭を乱暴に撫でてその場を去った。

残されたましろは彼らの無事を願いながらその意識を再び闇へ沈める。

…彼女の精神が消える時、そこに白い雪が僅かに舞うのを知っているのは骸だけ。



...
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