-White Snow-
□6.霧の中で。
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始まった争奪戦。
相変わらずましろは外出禁止。
側に行って、見守ることくらいしたい。
「るっす…大丈夫、かなぁ…」
晴れの戦いでルッスーリアは帰って来なかった。
ベルの話では負けて病院送りになっているとか。
笑いながら教えてくれたが、ましろは笑えなかった。
みんなが心配で仕方ない。
抜け出してしまおうか。
「隠れんぼは…得意、だよ…。」
薄れる意識の中で最後にそう呟いた。
その時に会いたいと想ったのは…
「 」
久しぶりに見た夢の中で、誰かがましろに話し掛けていた。
何を言っていたのかはわからない。
でも、悪いことでないことだけはわかった。
その人が、笑っていたから…。
目を覚ましたら今度はスクアーロが帰って来なかった。
鮫に、食べられてしまったのだとベルは相変わらずの調子で教えてくれる。
それだからましろには余計に辛かった。
笑顔でいる時間も短くなったと自覚できるくらいに。
みんなが平気でいられる理由がわからない。
争奪戦が進む度に心が悲鳴をあげて、気付けば部屋を飛び出していた。
今のましろは誰が何を言おうと止まらない。
並盛中学校のどこかがステージだという話だけは聞いていた。
明かりの点る場所を探して走り回れば、体育館の小窓から光が見えた。
急いで扉を開け放つと、立ち込める霧の中に独特な笑い声。
自然と溢れた涙の原因は知らない。
その場に立ち尽くしていると、審判をしていたチェルベッロに声を掛けられた。
どちら側とも言えないましろは、綱吉の説得で輪の中に入る。
「ましろちゃん…大丈夫?」
「ん……うん…」
こんなときでも心から心配してくれる綱吉。
それがとても嬉しくて、とても痛い。
目の前で広がる幻術の激しい攻防。
互いに油断を許さない中、楽しそうに戦う骸が別人に見えて寂しく思えた。
自分が知っている彼はもっとずっと優しかったから。
幻覚に慣れているましろは特に大きな影響を受けることもなく、途中で苦しむ綱吉を気にかけながらも見届けた。
センサーが解除されて直ぐに、骸に駆け寄って抱きつく。
周りの驚く声は不思議と全く気にならない。
ましろはそれほどまでに会いたくて、精神的にギリギリだった。
骸だけが本当の彼女を知っている。
それ故に、落ち着ける場所が無かった。
「…どうしました、ましろ。」
聞こえた声は、
優しいいつもの彼だった…
...