-White Snow-

□5.大切な音。
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ましろは自分でも何が起きたのか理解出来なかった。

つい先程まで腕を掴んでいた男が、急に喚きながら震えだしたのだ。

今は目の前で地面を転げ回っている。

周りにいた仲間も驚いて怯える男に声を掛けたりしていた。


「お、女!何をしやがった!」

「私…なに、も…」


複数の男に睨まれ銃を向けられて、ましろは恐怖に動けなくなってしまう。

逃げなくては命が危ないのに足がいうことをきかない。


助けて。


心の中で必死にそう叫んだ。

そしてまた、別の悲鳴がどこかから響き渡る。

ましろは怖くて目を閉じていたので、声の音源がどこかはわからない。

しばらくして…何かしてくる気配が無いことに疑問を抱いて、ゆっくり目を開ける。


「ばあっ!」

「…っきゃあ!」


いきなり目の前に現れた金髪の少年に吃驚してましろは尻餅ついた。

その様子を見て満足したように少年は腹を抱えて笑っている。


「お前、何してんの?ここで。」

「えと…知らない人に、会って、何か言われて…」

「うししっ…別に、そんなのどうでもいいし。」

「……?」

「王子超ヒマなんだよね。散歩してたら面白そうなの見つけたから寄ってみたんだけどさ。」


この人は一体何者なんだろうとましろは喋り続ける少年を観察する。

絡んできた男たちを始末したのは彼のようだ。

けれど、何か不思議な感じがする。

この出会いをこのまま終わりにしてはいけないと思ってしまう。


「…あのさ。話、聞いてるわけ?」

「あ、ご、ごめんなさい。助けてくれて…ありがとう。」

「助けたつもりねーけど。暇潰し。」

「お兄ちゃんは…何者、なの…?」


一番純粋な疑問をぶつけてみた。

裏があったりするわけでもない。

「知りたかったらまずは自分から名乗るのが普通じゃね?」

「あ…わ、私、ましろ!ずっと寝ていたの!」

寝ていたと聞いて少年は再び笑い出す。

ましろは事実を述べただけで、笑う点がよくわからなかった。

「…お前ってサイコー。オレ、ベルフェゴール。ベルでいーよ。」

ベルはうししと笑ってましろの頭をわしわしと撫でる。


「気に入った。ましろ、王子と来いよ。」


どこにと問う前に手を掴まれて車に乗る。

隣に座るベルは終始、楽しそうにして。



...
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