-White Snow-
□3.事の始まり。
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「……え…と…」
声を掛けたのは良かったが、次の言葉がでなかった。
頭の中が真っ白で一体何をどう聞けばいいのかわからない。
そんな様子を察した少年はましろに優しく微笑みかけた。
「道に迷ってしまったのですか…?この辺りはわかりにくいですからね。」
「ん……」
迷子、という状況は汲み取ってもらえた。
しかし帰る為に必要な住所というものも知らない。
「困りましたね…もうすぐ陽は沈んで暗くなりますし…。」
何故だか少年はわざとらしく困惑した素振りを見せ、ましろの不安を余計に煽る。
「や、あ…!つなよし、お家かえる!」
ましろは限界が近いのか、小さな体を微かに震わせ瞳には涙を滲ませた。
それを狙ったかのように優しく優しく、少年はましろに手を差し伸べる。
「暗くなってから動くのは危険です。僕でよろしければ、お付き合いしますよ。」
「うぅ…っ…おにぃ、ちゃ…ん…」
ましろは弱々しく少年の手を握る。
満足したようにその手を握り返し、裏があるように笑う少年。
――…やっと、見つけました。
貴女はもう、廻らなくていいんですよ…
「行きましょうか…僕が守ってあげますよ、ましろ…。」
「ぐすっ……ましろ…な、まえ…?」
「最初に会った時に、教えてもらいましたよ。」
「そう…だっけ…?」
きょとんとしてましろは初めのことを思い出そうとする。
が、その思考は途中で遮断されてしまった。
少年の手によって意識を飛ばされたとも気付かずに…。
………