-White Snow-

□9.今できること。
1ページ/3ページ


「つなよし大丈夫かなぁ。」

「そちらの方も、観覧スペースにお願いします。」

「ゲッ…オメェのせいでバレたびょん!」

「えーっ!ましろはちっちゃく言ったもん!」

「いいから行こう…。」


ひっそりと校舎の陰にいた三人はチェルベッロに見つかって渋々と観覧スペースへ移動する。

その時ましろはバジルの姿を見つけて、気まずそうに近寄った。


「あの…」

「お主はあの時の…!」

「ご、ごめんなさい!本当はあんな酷いこと、したくなくて!でも…っ」

「もう、いいでござる。お主が拙者を討つ気が無いのは目に見えていました。」

「え…?」

「失礼ですが、名前を聞いても?」

「わ、私…ましろ。」

「ましろ殿。いい名前でござるな。」


爽やかに笑うバジルに対して、ましろは不器用に笑い返す。

なんだかその場にいるのが落ち着かなくなってすぐに千種と犬の元に駆け戻った。

大きなモニターを見上げれば、いつもと違う調子の綱吉とザンザスの戦う姿が映っている。

激しいぶつかり合いと観覧するリボーンたちの冷静な解説。

時々変わる、守護者たちの苦しむ映像にましろは何か考える。

勝敗の行方はわからないけれど、ヴァリアーにいたから嫌な予感が余計に鋭くなった。

どちらに傾いても最後に何かが起こる、そんな気がして。


「ましろも、戦う!」

「ましろ…?」

「ファミリーだもん。みんなが頑張ってるのに、見てるだけは嫌っ!」

「やめとけ。バレたら即失格になんだぞ。」


離れていたリボーンがやって来て横から口を挟む。

守護者でないましろが参加したことが見つかれば、片方は確実に失格となる。

それ以前にセンサーの反応に引っ掛かることなく抜け出す術がない。


「ましろなら、できるもん。ここから出られる。」

「失敗しねー証拠でもあんのか?」

「ない!でも、自信はある!」

「ほう…?」


ましろとリボーンはしばらくの間、静かに見つめあって相手の出方を待った。

先に口を開いたのはリボーンの方で、口の端が笑っている。


「…わかった。やるだけやってみろ。ただし、失敗すんじゃねーぞ。」

「うん!」

「ましろ、一体何するんだびょん?」

「今できること!ちくさ、けん。ましろの身体、お願いします。」

「は…?」


ましろは言っていることが理解できていない二人に笑いかけて、ゆっくりと瞳を閉じた。

胸に手を当てて意識を闇へと沈めて集中すれば、肉体の方は糸が切れたように倒れかける。

千種はそれを支えて視線だけで疑問をリボーンに投げ掛けた。


「ましろはどういうわけか、肉体と精神を離して行動できるみてーだぞ。」

「なんでテメェが知ってんら!」

「お前たちが知らなかったのは意外だな。骸はこのことを知ってるぞ。」

「なにぃ…っ」

「…心配、かけたくないんじゃない。」

「そうかもな。ましろなりの気遣いってやつだ。」

「そんな必要…ないのに…。」


激闘の音が響く中、千種は肉体だけになったましろの身体を優しく抱き抱えていた。



...
次へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ