-White Snow-

□8.語れば、涙。
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―――時は少し遡り…







復讐者の牢獄を抜けて二手に別れた三人は黒曜ヘルシーランドで落ち合うことになっていた。

先に到着した犬と千種が提案した本人を探して名前を呼んでいた頃。


「…犬と、千種?」

「誰。」

「オメェ、誰だびょん!」

「骸様に言われて来たの。」

「……!」


目の前に現れたのは骸ではなく、クローム髑髏という眼帯を付けた少女。

信じられない二人が警戒していると聞き覚えのある声にその意識が緩む。

幻覚の状態で出てきた主に驚きと無念を抱きながらも、説明を受けて犬と千種は渋々に了承するしかなかった。

千種はクロームのことだけで話が終わると思いきや、もう一つ出てきたましろの名前。

骸が彼女のことを気にかけていたことは知っていたし、自分も犬もそれなりに思ってはいた。

いつでも明るく笑う無邪気な小さい妹。そんな感覚。

初めて会った時は、隙あらばしょっちゅうやってきてこちらを乱して帰っていく迷惑な少女だと思っていた。

黙って大人しくしていれば真っ白で可愛い、一際目立つ女の子。

あの薄暗く気味の悪い研究室で、ただ一人、あまりにも綺麗に笑うから惹かれていた。


「骸様…ましろは今…」

「ボンゴレとヴァリアーを行き来しているみたいですよ。相変わらず、甘いものです。」

「けっ…骸さんが大変だっていうのに、あいつだけ平和なんて許せねーびょん。」

「犬…。それで、ましろのことで何か…。」

「えぇ…僕はこの通り動けませんからね。代わりに犬、千種。」

「はい。」

「なんれすか。」

「ましろが頼ってきた時には、助けてあげて下さい。」


普段から人を助けることなどしない骸がましろを助けろと言う。

過酷な時を共に過ごしただけの仲とは思えないような、そんな発言。

千種は自分たちが知らない間に何かがあったと確信して静かに頷く。

彼とましろしか知らない、唯一の秘密。

これからもその先もきっと知ることの無い、越えられない一線がそこにある気がした。


「頼みましたよ。彼女の人のよさには、必ず虫がつきますからね。」

「…もう、ついていそうですが。」

「それだから、心配なんです…。」


骸は最後に苦笑とため息を残して消えていった。

本当なら彼自身がましろの側についていたいのだろう。


「あの…ましろって…?」

「…めんどい。」

「オメェに教える義理はねぇ!」

「でも…」

「古い友人。よく、遊びに来ていたんだ。」


何も知らないクロームにましろのことを簡単に説明する。

とりあえず昔からの友人であるという理解があれば良かったのだけれど、興味を惹いてしまったらしく。

隣で吠える犬を注意する暇もなく、千種は彼女の質問を小一時間ほど答えるのだった。



...
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