-White Snow-

□7.大空と白。
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ヴァリアー一行の滞在する高級ホテルに戻ってきたベルとましろ。

三人も減って随分と静かになってしまった部屋が寂しく感じる。


「とりあえず、ボスに謝っておいた方がいいんじゃね?」

「うん…。外、出ちゃったからね。」

「それ以外でも怒ってるかもしんねーけど。」

「出た以外…?」


何も思い当たらなくて首を傾げると、隣のベルはため息を吐いて苦笑する。

知っているなら教えてほしいとましろが訴えれば、直接聞けばいいと返されボスの部屋の扉の前。

戦いの前の小さな準備運動をしてから入るのがいつものこと。


…なのだが、今回に限ってベルの意地悪な気遣いが発動する。


「ボス。ましろ連れて来たから。」

「べる〜!」

「ししっ…ましろなら生きて帰れるだろ。」

「それはどういう」


言い切る前に視界が真っ暗になった。

すぐ後に腕を誰かに強く引かれたのだと理解して顔を上げれば、とても不機嫌そうなザンザスが見える。

半ば引きずられるように中央の大きなソファまで連れて来られると、珍しくそのまま座らされた。

ましろはいつもザンザスの前では椅子等に座らず、立った状態か床に直接座り込む形。

別にボスの地位を尊重するとか怖いとかの理由があってそうしているわけではない。

他の幹部や部下の人間がやっているから見て真似ている程度のことで、それをしてもザンザスによる指摘や注意が無かったのだ。


「ざんざす…?」


ましろは不思議そうに隣で座って酒をあおるザンザスを見上げる。

相変わらず無口な彼は聞いているのかいないのか、何の反応も返さない。

とりあえず進展が無いままでは困ってしまうので素直に謝ろうと声を出しかけたとき。


「…なぜ、外に出た。」

「え…?」

「答えろ。」

「みんなが、心配だったから…。」

「それだけか?」

「ん…うん。ごめんなさい。」

「………。」


それからしばらくの沈黙の後、ましろは何か話そうと会話の種を懸命に考えた。

ザンザスが興味を持ってくれそうな、返事の無い返事が来なさそうな何か。

悩みに悩んだ結果、導きだした一つめの種。


「ざんざす!夢は、なにっ?」

「…あ?」

「ましろはね、忘れちゃったこと全部思い出して、みんなといっぱい遊びたい!」

「記憶がねぇのか。」

「うん…。でもね、自分の名前と景色は覚えてたの。」


少しだけ興味を惹いたらしいましろの過去語り。

ほぼ一方的なやり取りでもザンザスがちゃんと聞いて理解してくれていたから嬉しかった。

普段会うことも話すことも少ないだけ余計に。


「今はどうなんだ。」

「うーん…特に、思い出せたことは無いかな…。」

「何か思い出したら報告しろ。」

「うん!」


ましろはまた長く話せる機会を掴めたと思って笑顔が絶えない。

いつの間にかザンザスの不機嫌も治まって、このまま終われば良かったのだけれど。

気になって再び聞いてしまった。



「ざんざすの夢は、なに?」



...
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